Dish Networkが5Gを開始、全米カバー率20%を目指す:スタンドアロン5Gを展開(2/2 ページ)
Dish Networkが2022年5月、米国ネバダ州ラスベガスにおいて、ようやく国内5G(第5世代移動通信)市場への参入を実現した。しかし、これはやっと最初のハードルを越えたにすぎない。発展途上の5G事業者である同社が、米国全土で5Gネットワークの実現を目指していくためには、まだクリアしなければならない障壁が数多く残っているためだ。
スタンドアロン5Gの展開で注目
Dish Networkは、T-Mobileを除いた米国の通信事業者の中で、初めてスタンドアロンで5Gネットワークを始動させた企業の1つだ。Dish Networkは、既存の4G/LTEネットワークでは構築しないため、実績ある既存のモバイル通信事業社のほとんどが現在行っているように、4Gコアを使って5G無線ネットワークを管理する必要がない。
市場調査会社であるDell’Oro Groupは、新しく発表したレポートの中で、「Dish Networkの5G立ち上げは、最も期待を集めた5Gコア始動に関する発表の1つである。パブリッククラウド上で5Gコアを動作させた、最初の企業と言えるだろう。Dish Networkの主要な5GコアベンダーはNokiaだ」と指摘する。
Entner氏は、「アナリストたちは、Dish Networkの5Gコア始動に対して高い関心をもっているが、同社が2022年6月半ばまでに、米国の人口カバー率20%を達成すべく25の主要市場を始動させとしても、企業や消費者たちが新しい5Gネットワークに対してそれほど興味を持つとは思えない」と述べる。
「人口カバー率20%では、同社の前進を確実に妨げることになるだろう。同社は現在、2023年に向けたテストの第2段階に入ったと言うべきではないか」(Entner氏)
同氏は、「Dish Networkが、このように限られたカバー率のネットワークを使うために、パートナーであるモバイルバーチャルネットワークオペレーターやさまざまな企業との間で契約することができるとは思えない。数件のトライアルを確保したとしても、辛口の評価を得ることになるだろう」と述べる。
1年後にはカバー率70%へ
Dish Networkは、引き続き2023年6月14日まで、米国において人口カバー率70%を達成可能な5Gネットワークを構築していく必要がある。野心的な5Gの目標を掲げる同社は、米連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)に対し、少なくとも1万5000箇所の5Gサイトと、同社の帯域幅30MHzの5Gダウンリンクを使用することにより、全国規模の設備型ワイヤレス競合企業としての存在を確立することを約束したという。
現在、米国では、T-Mobileが3億1000万人を対象に5Gサービスを展開している。AT&Tは2億5500万人、Verizonは2億3000万人以上を対象としている。2023年夏にDish Networkがライバルとして登場するころには、これら3社の主要オペレーターのカバー率も、さらに増加しているだろう。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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