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ワイヤレス電力伝送で実際に電子機器を動作させる:福田昭のデバイス通信(369) imecが語るワイヤレス電力伝送技術(23)(2/2 ページ)
今回は「7.4 試作例」の講演パートを解説する。ワイヤレス受電端末を試作し、低消費電力の小型機器をワイヤレス電力伝送で動かした。
置き時計や温度センサーなどの電源をワイヤレスで供給
最初の実験例は水晶振動子方式の置き時計(クオーツクロック)である。電源電圧は1.5V、消費電流は100μAなので、消費電力は150μWとなる。
ワイヤレス電力伝送によって低消費電力機器を動かす。クオーツクロックの例[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)
次の実験例は液晶ディスプレイ付き温度センサーである。電源電圧は1.5V、消費電流は15.33μAとかなり低い。消費電力は23μWしかない。
ワイヤレス電力伝送によって低消費電力機器を動かす。液晶ディスプレイ付き温度センサーの例[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)
最後の実験例は、温度と湿度を測定して結果を無線で本体に送信するセンサー端末である。このようなシステムは「ワイヤレスウェザーステーション(Wireless Weather Station)」と呼ばれる。45秒ごとに823ミリ秒の期間で測定結果を無線でバースト送信する。無線信号送信時の電力は3.5mW(電圧は3V、電流は1.17mA)とそれなりの大きさがある。ただし無線信号の送信は間欠的で間隔は45秒とかなり長いので、平均電力は64μWと低くなる。
ワイヤレス電力伝送によって低消費電力機器を動かす。温度と湿度を測定して結果を無線で本体に送信するセンサー端末(「ワイヤレスウエザーステーション(Wireless Weather Station)」)の例[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)
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