Weebit Nano、ReRAM IPモジュ―ルのデモ初披露:7年の研究開発の末、製品化に向け前進
イスラエルのWeebit Nanoは、ReRAM技術の商用化に向けて最も積極的に取り組んできた企業の1つだ。同社は7年間に及ぶ研究開発の末、今回ついに業界で初めてReRAM IPモジュールの公開デモを披露するに至った。
イスラエルのWeebit Nanoは、ReRAM技術の商用化に向けて最も積極的に取り組んできた企業の1つだ。同社は7年間に及ぶ研究開発の末、今回ついに業界で初めてReRAM IPモジュールの公開デモを披露するに至った。
Weebit Nanoは、フランス・グルノーブルで2022年6月21〜23日に開催された「Leti Innovation Days」において、ReRAM IPモジュールを発表し、実際にサブシステムに搭載された不揮発性メモリ(NVM)として、その機能を披露した。今回のデモは、モジュールのテープアウトからまだ1年もたたないうちに行われたことになる。同社がReRAM技術の製品化を実現していく上で、重要なマイルストーンになるだろう。
今回のイベントでデモ実演が行われたIPモジュールには、ReRAMアレイや制御ロジック、デコーダー、IO通信エレメント、ECC(誤り訂正符号)などが含まれる。また、現在特許申請中のアナログ/デジタルスマート回路は、スマートアルゴリズムを実行することにより、メモリアレイの技術パラメーターを大幅に高められるという。
Weebitは、ReRAMモジュールを、RISC-V MCU、システムインタフェース、スタティックRAMおよび周辺機器を含む完全なサブシステムに統合した[クリックで拡大] 出所:Weebit Nano
Weebit NanoのチーフサイエンティストであるGabriel Molas氏は、ReRAMチップを搭載したボードを、タッチスクリーン搭載の「Raspberry Pi(ラズパイ)」に接続し、IPモジュール機能のデモを披露した。デモでは、ReRAMの優れた書き込み速度と高いデータ保持性能を示すべく、テキストを引き出して、スクリーン上の描画エリアでテキストを生成している。Weebit NanoのReRAMは、組み込みNVMブロックとして機能し、リアルタイムで画像が送られ、モジュールの電源オフ時でも、データは保持されるという。
Molas氏は、「データ書き込みのデモにおいて注目すべきは、必要なビットだけをプログラムしている点だ。このためReRAM IPは、高い精度を実現する。もし何も情報を書き込む必要がない場合、時間はかなり短くなる。デモ実演では、一般的なフラッシュメモリ技術と比べて高速な書き込みを行っていた。これはReRAMが、『Direct Program/Erase』機能を備え、バイト単位でアクセス可能なためだ。フラッシュメモリの場合、データの消去や書き込みを行うたびに、データセクター全体にアクセスする必要がある」と説明する。
Weebit Nanoが今回初めて披露したReRAM IPのデモが、CEA-Letiの主催するイベントの一部として行われたのは、適切だったといえるだろう。というのも、Weebit NanoのCEO(最高経営責任者)であるCody Hanoch氏はしばしば、CEA-Letiが、「当社の延長上にある」と説明していたからだ。Weebit Nanoは、CEA-Letiとの間で、IP関連の協業体制を継続的に拡大してきた。そして、過去10年間にわたるメモリ研究への幅広い投資を活用していく考えだ。
両者が協業において、重要なターゲットとして定めているのが、ディスクリートReRAM向けセレクターの開発だ。これは、大規模アレイを構築するための重要なコンポーネントであり、ReRAMがNANDフラッシュとの競争を繰り広げていく上でのチャンスを開く可能性を秘めている。
Weebitは、AI(人工知能)やニューラルネットワーク、ニューロモーフィックコンピューティングへのReRAMの応用を探ることに大きな関心を示しているが、最も重視しているのは、大量の組み込み用ReRAMの市場を獲得することだ。そして、その収益を、顧客の要望に応えて2022年初頭に立ち上げ始めたディスクリートReRAMのさらなる開発の原動力とすることが目標だろう。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- AI技術が切り開く「インメモリコンピューティング」の可能性
人工知能(AI)とインメモリコンピューティングへの関心が著しく高まる中、ReRAM(抵抗変化型メモリ)は人間の脳を模倣する能力を解き放つ鍵になり得る。とはいえ、まだ課題は残っている。 - 次世代メモリ市場、2031年までに440億米ドル規模へ
米国の半導体市場調査会社であるObjective AnalysisとCoughlin Associatesは、共同執筆した年次レポートの中で「次世代メモリが、さらなる急成長を遂げようとしている」という見解を示した。次世代メモリ市場は2031年までに、440億米ドル規模に達する見込みだという。 - CrossBar、ReRAMを用いた高信頼IoTセキュリティ実現へ
抵抗変化メモリ(ReRAM)を手掛けるCrossBarは、同社の技術をReRAMベースのPUF(物理的複製防止機能)キーとして、ハードウェアセキュリティアプリケーションで使用するために適用するという。 - ReRAMによる「インメモリエネルギー」技術
次世代メモリ技術の開発を手掛けるイスラエルのWeebit Nanoとフランスの研究機関であるCEA-Letiは、抵抗変化型メモリ(ReRAM)技術の開発における進展を報告した。この中には、CEA-Letiが“最新の手法”と呼ぶ、印加電圧に応じて、ReRAMデバイスをメモリとしてだけでなくエネルギーストレージ素子としても動作可能にする技術も含まれている。 - ReRAMを活用して自立型のAI学習性能を向上
次世代メモリ技術の開発を手掛けるイスラエルのWeebit Nanoは、シリコン酸化物(SiOx)抵抗変化メモリ(ReRAM)技術を活用した最新の研究成果を発表した。同社が開発した脳からヒントを得た人工知能(AI)システムは、学習タスクを監視せずに実行して、高精度な結果を提供することができるという。 - AI技術の進化で注目が高まるReRAM
次世代不揮発メモリの一つである抵抗変化メモリ(ReRAM)は、その大部分がまだ研究開発の段階にあるが、AI(人工知能)技術の進化で、注目が高まっている。