JSR、異種材料の界面制御が可能な新材料を開発:高い密着性と分散性を実現
JSRは、異種材料の界面制御が可能な新材料「HAGシリーズ」を開発した。高い密着性と分散性を実現することができるという。
SDGsに対応、原料の一部にバイオ原料由来成分を採用
JSRは2022年7月、異種材料の界面制御が可能な新材料「HAGシリーズ」を開発した。高い密着性と分散性を実現することができるという。
新たに開発した界面制御ユニット(NewCore)は、さまざまな異種材料を高い密着力で接合することが可能となる。例えば、金原子への安定化エネルギーは、従来のフェニル構造と比べ極めて大きく、高い密着力があることを確認した。
また、添加材料としての活用も可能である。用途に応じて溶解性や相溶性、熱特性、吸水性、電気特性などを最適化するために、無機や有機フィラーなどを添加するが、これらを高密度かつ均一に分散することができるという。末端機能化も可能で、硬化樹脂と架橋反応可能な官能基を導入したグレードも用意した。なお、開発した材料は、原料の一部にバイオ原料由来成分を用いるなど、SDGs(持続可能な開発目標)にも対応している。
HAGシリーズは、さまざまな異種材料の接合で、強力な密着力を実現した。室温ラミネートによる密着性にも優れているという。JSRは、接着状態での電気絶縁性についても、高度加速寿命試験(HAST試験)や絶縁破壊電圧評価を行い確認した。
分散剤としての効果も検証した。シリカフィラーをHAGシリーズでプレ分散した分散液を調整後、エポキシ樹脂を追加したフィラー分散液を作製した。この分散液を一晩放置したが、シリカフィラーの沈殿は見られなかったという。一方で、HAGシリーズを用いないエポキシ樹脂とシリカフィラーの分散液は、シリカフィラーが沈殿していることを確認した。
HAGシリーズは、主材樹脂として使用することも可能である。HAGシリーズにフィラーを分散させた分散液は、高い保存安定性を示し、フィルム化も容易だという。しなやかな有機−無機複合フィルムが得られ、冷熱サイクルなどの衝撃試験においても、高い信頼性を示すことが分かった。エポキシ樹脂などを併用すると、弾性を制御できることも確認した。
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