ナノソルダー接合材料、低温接合で耐熱200℃を両立:パワー半導体の組み立てに適用
パナソニック ホールディングスは、東北大学や大阪教育大学、秋田大学、芝浦工業大学と共同で、低温かつ短時間での接合と、耐熱200℃を両立させた「ナノソルダー接合材料」を開発した。
低融点金属粒子と高融点金属粒子を組み合わせた固液反応を利用
パナソニック ホールディングスは2022年6月、東北大学や大阪教育大学、秋田大学、芝浦工業大学と共同で、低温かつ短時間での接合と、耐熱200℃を両立させた「ナノソルダー接合材料」を開発したと発表した。GaN(窒化ガリウム)やSiC(炭化ケイ素)をベースとするパワー半導体の組み立て工程などに適用していく。
パナソニック ホールディングスは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が進める「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」で「ナノソルダー実用化による製造プロセス省エネ化技術の開発」に取り組むプロジェクトの中で、パワー半導体に向けた新規はんだ材料の開発に取り組んできた。
開発したナノソルダー接合材料は、直径が10μm以下の低融点金属マイクロ粒子と、直径が数百nm以下の高融点金属ナノ粒子を組み合わせた複合材料。低融点金属マイクロ粒子を導入したことで、固相(高融点金属ナノ粒子)の拡散速度が速くなり、接合反応を短時間で完了させることができるという。その時間は銀ナノペーストなど従来の焼結材料に比べ約半分となった。
また、ナノソルダー接合材料で用いる金属粒子を、低消費電力で効率よく製造するための装置も開発した。これにより、超音波キャビテーションが発生する高温高圧の反応場を活用し、バルク金属(純金属塊)からトップダウン方式で金属粒子を作製することが可能となった。
ナノソルダー接合材料を用いた接合について、接合前後の示差走査熱量を測定し検証を行った。この結果、接合前の吸熱ピークは200℃以下であり、200℃の低温プロセスで接合できることが分かった。接合後は200℃以下の吸熱ピークが消失した。このことは、構造体が高融点化していることを示すものだという。
接合後の構造体を電子顕微鏡で確認した。銅とスズの高融点金属相に、銅とビスマスの孤立相が分散しており、設計通りの状態だという。接合構造体は、−40℃/175℃の温度サイクル試験もクリアできることを確認した。
パナソニック ホールディングスは今後、開発したナノソルダー接合材料について、電子デバイスの組み立て工程における作業性などを改善し、2022年12月ごろからサンプル出荷を始める予定だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 東北大学、カーボンリサイクル技術の事業化を検証
東北大学は、産業廃棄物(シリコンスラッジ)とCO2(二酸化炭素)を反応させて、SiC(炭化ケイ素)を合成する技術を開発し、カーボンリサイクル技術として事業化に向けた検証を行っていく。 - 新手法で燃料電池触媒のORR活性を2倍以上に向上
量子科学技術研究開発機構(量研)と東京大学、日本原子力研究開発機構らの研究グループは、燃料電池自動車(FCV)の動力源となる固体高分子形燃料電池(PEFC)の触媒性能を、2倍以上も向上させる新たな手法を開発した。 - 複数AIアクセラレータ搭載チップ、動作を確認
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)らは、仕様が異なる6種類のAIアクセラレータを搭載した実証チップ「AI-One」を試作し、設計通りの周波数で動作することを確認した。AIアクセラレータ向け評価プラットフォームを活用することで、従来に比べAIチップの開発期間を45%以下に短縮できるという。 - NEC、LHZ方式の基本ユニットを開発し動作を実証
NECは、超伝導パラメトロンを用い、多ビット化が容易なLHZ方式の基本ユニットを世界で初めて開発し、アニーリング動作の実証に成功した。量子アニーリングマシンの実現に向けて、開発を加速する。 - 大陽日酸、大口径ウエハー上に酸化ガリウムを成膜
大陽日酸は、東京農工大学やノベルクリスタルテクノロジーと共同で、ハライド気相成長(HVPE)法により、6インチウエハー(サファイア基板)上に酸化ガリウム薄膜を形成することに成功した。 - MEMS技術を用い電子部品の薄型・小型化を実現
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とアルファー精工、旭電化研究所および、シナプスは、MEMS技術を用い、薄型かつ小型で優れた伝送特性を備えた電子部品の開発に成功した。素材として金属と樹脂を用いるため、第6世代移動通信(6G)システム向けのコネクターやソケットなどに適用することができる。