マスクROMの始まり(1950年代〜1960年代):福田昭のストレージ通信(219) フラッシュメモリと不揮発性メモリの歴史年表(3)(2/2 ページ)
今回は、これまでほとんど知られていなかった、マスクROMのルーツが判明したので、その内容をお届けする。
マスクROMの起源はpn接合ダイオードのアレイ
ここで1つの疑問が生まれた。マスクROMはいつ、誰が発明したかである。それも程なく判明した。1957年にpn接合ダイオードをメモリセルとするROMのアイデアが米国特許として出願されていた。出願人はアメリカンボッシュアルマ(American Bosch Arma)、発明者はWen Tsing ChowとWilliam H. Henrichである。
1957年だと、集積回路はまだ発明されていない。pn接合ダイオードは個別半導体素子であり、ボードに配線(ワード線とビット線)とダイオードを配置することで不揮発性メモリを構成していたと考えられる。このメモリはROMの原型と言えよう。ただしマスクROMではない。また、このアイデアが実用化されたのかどうかは残念ながら、分からなかった。
1970年代初期には数多くの半導体企業がマスクROMを製品化
コンピュータの歴史を記述したWebサイトとして知られる「Computer History Museum(コンピュータ歴史博物館)」によると、1965年にはバイポーラTTL技術による256ビットのマスクROMと、MOS技術による1024ビットのマスクROMが開発された(参考)。
「Computer History Museum」の記述によると1970年代初期には、バイポーラTTL技術によるマスクROMをインテル(Intel)やモトローラ(Motorola)、フェアチャイルド(Fairchild)などが製品化し、MOS技術によるマスクROMをAMDやAMI(American Microsystems, Inc.)、ゼネラルインストルメント(General Instrument)などが製品化した。その後、両技術のどちらが残ったのかを説明する必要はないだろう。
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