2組の正弦/余弦出力で冗長性を確保、TMR角度センサー:サイズは従来比で約半分に
TDKは2022年7月14日、冗長性を備えた小型アナログTMR角度センサー「TAS4240」を開発したと発表した。従来品と同等の精度、特性を有しながら従来比約2分の1小型化をしており、低コスト/低消費電力も実現。電気自動車(EV)市場を中心に展開していく。
TDKは2022年7月14日、冗長性を備えた小型アナログTMR(Tunnel Magneto Resistance)角度センサー「TAS4240」を開発したと発表した。従来品と同等の精度、特性を有しながら従来比約2分の1小型化をしており、低コスト/低消費電力も実現。電気自動車(EV)市場を中心に展開していく。既にサンプル提供中(サンプル価格は1個2ユーロ)で、2022年4月から量産も行っている。
自動車の電動化が加速するに従い、駆動モーターおよびトランスミッション用アクチュエーターのほか、EPS(電動パワーステアリング)やブレーキブースター用などクルマ1台に搭載されるモーターの数は増加を続けている。その角度/位置検出に用いるTMR角度センサーに対し、自動車メーカーからは、冗長性確保および小型化などの要求が高まっているという。
TAS4240はこうした要求に応えた製品で、1つのパッケージ内にTMRハーフブリッジを4個搭載し、2組の正弦/余弦出力を備えたTMR角度センサーだ。1つのセンサーが故障した場合ももう1つのセンサーによって問題なく動作が可能という冗長性を確保し、システムレベルでASIL-Dをサポート。EV向けをはじめとした高い安全性を要求されるアプリケーションで用いられる、ブラシレスDCモーターの角度/位置検出に適するとしている。また、車載用電子部品の信頼性規格「AEC-Q100」にも準拠している。
TAS4240の大きな特長は、そのサイズだ。同社が従来提供してきた冗長性のあるTMR角度センサーはTSSOP16パッケージ(5.0×6.4×1.1mm)だったが、TAS4240ではTSSOP8パッケージ(3.0×6.4×1.1mm)を採用しており、約2分の1の小型化を実現している。また、これにより用いる材料が減ることから従来品より安価にもなったという。
TAS4240は、−40〜+150℃において360度の非接触角度計測が可能で、角度精度は±0.3度(標準値、25℃環境下。全温度範囲では±1.0度未満)と、従来品と同等の高精度を維持。同社説明担当者は、「これまで培ったノウハウを生かした回路の工夫によって、特性を落とすことなく面積を半分に抑え込むことに成功した」と述べていた。また小型化によって、10mW(標準値)という低消費電力も同時に実現している。
同社の説明担当者は、「TAS4240は、精度を維持しつつ、冗長性確保や小型化、低コスト化といった自動車業界の要求に応えた製品だ。われわれは2014年にはTMRセンサーを量産化し、多くの自動車メーカーに採用された実績もある。今後も製品の特性と市場での実績を強みに、クルマの電動化、自動化の進行とともに拡大が見込まれる市場での採用拡大を目指す」としている。
また、同社はTAS4240を産業用ロボットのサーボモーターなど産業機器向けもターゲットとして展開していく方針だ。
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