低抵抗の樹脂電極タイプMLCCを独自構造で実現、TDK:「CNシリーズ」に2製品を追加
TDKは2021年9月14日、樹脂電極品ながら端子抵抗を通常電極品と同レベルに抑えた積層セラミックコンデンサー(MLCC)「CNシリーズ」の新製品を開発した、と発表した。新たにラインアップに加わったのは、3216サイズで静電容量値10μFと3225サイズで22μFの2製品で、同月から量産を開始した。
TDKは2021年9月14日、樹脂電極品ながら端子抵抗を通常電極品と同レベルに抑えた積層セラミックコンデンサー(MLCC)「CNシリーズ」の新製品を開発した、と発表した。新たにラインアップに加わったのは、3216サイズで静電容量値10μFと3225サイズで22μFの2製品で、同月から量産を開始した。産業用ロボット等の電源ラインおよび、各種車載用電子制御ユニット(ECU)の電源ラインの平滑、デカップリング用途などを見込み、MLCCの部品数削減やセットの小型化を実現する。
TDK独自開発の電極構造
通常のMLCCは、セラミック素体の両端面に銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)の3層構造の電極を形成している。ただ、高電圧となる電源ラインではショートの発生を抑えることが重要であり、その対策としては、Cuの上に導電性樹脂の層を組み込んだ、Cu/樹脂層/Ni/Snの4層構造の樹脂電極タイプのMLCCが有効になる。こうした従来の樹脂電極タイプのMLCCは、基板たわみの応力や熱衝撃によるハンダ接合部の膨張および収縮による応力への耐性を有し高い信頼性を実現する。しかし、Cu層全体を樹脂層が覆う構造のため、通常のMLCCと比べ端子電極の抵抗がわずかながら高くなるという点が、通常品から置き換える際の障害になっていた。
同社のCNシリーズでは、基板たわみ応力が集中する基板実装面側のみに樹脂層を塗布する独自の構造を採用。メカニカル応力を緩和し、セラミック素体をクラックから守りつつも、電流が高抵抗である樹脂層を通らないため、端子抵抗を通常品と同等に抑えることができるという。
同社はCNシリーズを2018年に発表。たわみ応力の影響が大きい「3216サイズ以上」、ショート発生時のリスクが大きい「耐圧16V以上」、平滑、デカップリング用で多く使用される「大容量2.2μF以上」という3点をコンセプトに開発し複数製品を既に量産中だ(下図内の表参照)
今回、新たに発表したのは、3216サイズ(3.2×1.6×1.6mm)で10μF、3225サイズ(3.2×2.5×2.5mm)で22μFの2製品。同社担当者は「3225サイズでは、従来品(従来の樹脂電極タイプ)の2倍の容量を実現した。従来品では2個のMLCCを並列に実装することで取得していた静電容量値が1個で実現可能であり、部品数が削減できる」と説明。3216サイズで10μFの製品はCNシリーズで耐圧16Vのものがあったが、「25Vの対応が可能となり、顧客の選択肢が増えると考えている」としている。
基盤曲げ10mmでもクラック無し
同社は、たわみ量10mmという厳しい条件で基板曲げ試験を実施し、一般品が100%クラックが発生した一方、CNシリーズは従来の樹脂電極タイプと同様にクラックは確認されなかったしている。なお、熱衝撃に関しては「推奨していない」といい、「顧客の使用用途や環境条件を十分に確認したうえで、従来の樹脂電極品との使い分けをすすめている」と説明してる。
ESR(等価直列抵抗)についても従来の樹脂電極タイプと同等レベルであり、一般品と比べESRおよび発熱量が約60%低減できるとしている。一般品から樹脂電極タイプへ置き換える場合、発熱量を考慮し基板設計の変更が必要になるケースもあるが、同社担当者は「CNシリーズはESRがほぼ同等であり、そうしたリスクを軽減し、樹脂電極品への置き換えを促進できる」と語っていた。
CNシリーズの製品は、車載グレードの「CNAシリーズ」と一般グレードの「CNCシリーズ」の2種類がある。今回発表した製品は、車載、産業ロボット用電源ライン(12〜14V)の入力用の平滑、デカップリングコンデンサーおよび、xEVのDC-DCコンバーター(12〜14V)での出力用のデカップリングコンデンサーなどとしての用途を想定している。なお、車載グレードはAEC-Q200に準拠している。
同社の説明担当者は、「車載用では、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転などの開発が進む中で、高信頼性製品である樹脂電極品の採用が増加、車両メーカーでは樹脂電極品が広く認識されてきた。また、クルマの電装化も進み消費電力も増える中、ESRをコンデンサーで抑えることで、トータルの発熱量を抑えることにも貢献できる。高信頼性および低抵抗を実現した本製品は、業界の需要にマッチした製品だ」と語っていた。
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