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フラッシュメモリがついに登場(1980年代前半)福田昭のストレージ通信(220) フラッシュメモリと不揮発性メモリの歴史年表(4)(2/2 ページ)

今回は、1981年から1985年の主な出来事を報告する。ついにフラッシュメモリ(フラッシュEEPROM)が登場する時期だ。

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従来型EEPROMの弱点を解決したフラッシュEEPROM

 EEPROMは、UV-EPROMに比べると記憶容量当たりの製造コストが高いという大きな弱点を抱えていた。EEPROMは、1個のセル選択用トランジスタと1個の記憶用トランジスタでメモリセルを構成する。2個のトランジスタで1個のメモリセルを実現しているので「2トランジスタセル(2Tセル)」と呼ぶ。UV-EPROMのメモリセルは1個のトランジスタしかない。1個のトランジスタがセル選択と記憶を兼ねる。「1トランジスタセル(1Tセル)」と呼ぶ。原理的には製造コストに2倍の差がつく。

 ただし、EEPROMは記憶したデータを電気的にバイト単位で書き換えられるという長所を備える。UV-EPROMでは記憶したデータを書き換えるためには、全てのデータを紫外線照射によってあらかじめ消去しなければならない。EEPROMは高機能で高価格、UV-EPROMは低機能で低価格、という位置付けになる。


フラッシュメモリと不揮発性メモリの主な出来事(1981年〜1985年)[クリックで拡大]

 1984年には、フラッシュEEPROMが研究開発コミュニティーに登場する。後には「フラッシュメモリ」と呼ばれるようになるメモリだ。フラッシュEEPROMとそれまでのEEPROM(従来型EEPROMあるいは標準型EEPROM)、UV-EPROMの違いは以下のようになる。

 フラッシュEEPROMは1個のトランジスタだけでメモリセルを構成している。記憶容量当たりの製造コスト(シリコンダイの製造コスト)は従来型EEPROMよりも低く、原理的にはUV-EPROMとほぼ変わらない。そしてUV-EPROMはコストの高い窓付きセラミックパッケージを必要とするのに対し、フラッシュEEPROMはコストの低いプラスチックパッケージが使える。理論的にはUV-EPROMよりも記憶容量当たりの製造コストを低くできる。

 フラッシュEEPROMのデータ書き換えは、始めに全ビットの一括消去を必要とする。バイト単位の書き換えはできない。従来型EEPROMよりも使い勝手は悪い。UV-EPROMはデータの消去に紫外線を必要とするのに対し、フラッシュEEPROMは電気的にデータを消せる。UV-EPROMに比べると、はるかに使いやすい。

 フラッシュEEPROMの発明企業は少なくとも2つ。1つは東芝である。東芝の舛岡富士雄らは1984年12月に国際学会IEDMで「フラッシュEEPROM」と名付けた不揮発性メモリの研究開発成果(表題は「A NEW FLASH E2PROM CELL USING TRIPLE POLYSILICON TECHNOLOGY」)を発表した。

 もう1つは米国の不揮発性メモリベンチャー、エクセルマイクロエレクトロニクス(Exel Microelectronics)である。同社のSatyen Mukherjeeらは1984年11月に「SINGLE TRANSISTOR ELECTRICALLY PROGRAMMABLE MEMORY DEVICE AND METHOD(1個のトランジスタで電気的にプログラム可能なメモリとその方法)」と題する米国特許(US4698787)を出願した。

(次回に続く)

⇒「福田昭のストレージ通信」連載バックナンバー一覧

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