「MacBook Pro」を分解、M1/M2と周辺チップの変遷をたどる:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(64)(3/3 ページ)
今回は、Appleの「MacBook Pro」の分解結果を報告する。同社のプロセッサ「M1」「M2」や、周辺チップの変遷をたどってみたい。
“部品の共通化”が垣間見えるTCON
図4は、M2 MacBook Proのディスプレイコントロール基板に搭載されるディスプレイタイミングコントローラーTCONの様子である。
あらゆる大型ディスプレイ機器には、TCONが必ず使用される(ただしスマートフォンやスマートウォッチは非搭載)。Apple製品の多くは、Parade Technologies(以下、Parade)のTCONが採用されている(iPadもそうだ)。
2021年に発売された「24インチiMac」と、2022年発売のMacBook ProのTCONは、Paradeの「DP855A」を採用している。サイズが異なるディスプレイではあるが、同じTCONが採用されており、Apple製品の部品が共通化されていることがよく分かる。ちなみに、2011年発売のMacBookのTCONはParadeの「DP615」だ。ほぼ10年間、Paradeのチップが使い続けられている。また、図4には示していないが、2011年発売のMacBookのタッチパッド用ICは、Broadcomの「BCM5976」である。2022年のMacBookでも同じBCM5976が採用されている。10年選手のチップは、他にもあるわけだ。
ついにIntel製Thunderboltチップが消えた
表3は、かなり省略しているが(ほぼ毎年モデルのデータはあるが)MacBookの過去11年間のモデルにおける、プロセッサとThunderboltインタフェースチップの一覧である。
2011年モデルからThunderboltチップが搭載されている。その後のMacの全製品にIntel製のThunderboltチップが採用されてきた。2020年5月に発売されたMacBook Proまでは、プロセッサもIntel製が採用されている。
2020年11月発売のMacBookでApple製M1が採用されて以降、Intel製プロセッサは採用されなくなったが、その後も多くのApple製品でIntelのThunderboltチップは採用されている(2022年3月発売の「Mac Studio」もIntel製を採用)。
しかし、2022年6月発売のMacBook Proでは、Intelではないインタフェースチップに置き変わっている。詳細はテカナリエレポートで確認いただきたい(型名はマスクさせていただいた)。既にチップ開封解析も終わっている。M2版MacBook ProでついにIntelが消えてしまったのだ……! 次のApple製品では、真っ先にThunderboltチップをチェックしていきたい。
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