エッジAIで実現するセンサーレス車載モーター制御:InfineonのAURIX TC4x
Infineon Technologiesはドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2022」(2022年6月21〜23日)において、車載マイコン「AURIX」の新ファミリー「AURIX TC4x」を用いたセンサーレスの車載モーター制御ソリューションを紹介した。
Infineon Technologiesはドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2022」(2022年6月21〜23日)において、車載マイコン「AURIX」の新ファミリー「AURIX TC4x」を用いたセンサーレスの車載モーター制御ソリューションを紹介した。
並列処理ユニット「PPU」活用でBOMコスト削減など実現
AURIX TC4xが搭載する並列処理ユニット「PPU(Parallel Processing Unit)」を活用することで、従来必要な位置センサーなどをAI(人工知能)に置き換え、センサーレスのFOC(Field Oriented Control)を実現するというもので、精度や安全性の向上、BOM(部品表)コストの削減などが可能になるという。
AURIXは、「DSP」「RISC」「MCU/MPU」の3つの機能を統合したInfineonの独自CPUコア「TriCore」搭載の車載マイコン。AURIX TC4xでは、TriCoreの最新版「TriCore v1.8」を新たに採用し、最大動作周波数は最大500MHzと、前世代(300MHz)に比べて性能は約60%向上した。さらに、PPUおよびデータルーティングエンジン(DRE)や信号処理ユニット(SPU)、ハードウェアセキュリティモジュール「CSRM/CSS」で構成する「AURIX Accelerator Suite」の搭載によってAI処理能力を高めている。説明を担当した同社の自動車事業部プロダクトアプリケーションエンジニア、Christoph Seitz氏は、「車載分野では、ゾーンコントローラーやADAS(先進運転支援システム)などをはじめAIがサポートできる分野は幅広い。AURIX TC4xではそれらにうまく対応できる」と述べていた。
AURIXによる2つのソリューション
今回、同社はそうした車載向けのAI活用事例として、FOC向けのソリューションを、前世代の「AURIX TC3x」を用いたものと合わせて紹介していた。
まず、AURIX TC3xを用いた場合では、エッジAI、機械学習に特化したソフトウェア開発キット「Ekkono」と組み合わせ、モーター制御において安全性およびコスト効率を向上するとしている。具体的には、下図のように、TriCore上で走るAIが制御の測定値(電流値、電圧値)を取得し、モーター位置を決定するという内容で、「位置センサー、速度センサーを多様な冗長構成にすることで、安全性を高めている。AIが安全性の監視役として機能するため、冗長センサーを追加する必要がなくなる」としている。
なお、このソリューションはAURIX TC3xだけでなく他のAURIX TC4xファミリーでも対応可能だ。
一方で、AURIX TC4xを用いたソリューションでは、搭載するPPUおよび、パートナーのSynopsysによるPPU向けのソフトウェア開発キット「ARC MetaWare Toolkit for AURIX TC4x」を組み合わせることで、上記の場合に必要な位置センサー、速度センサーを完全にAIに置き換えることが可能になるとしている。
具体的には、下図の形で、AIによる『バーチャルセンシング』によって、「物理センサーを置き換え、強化することが可能で、BOMコスト削減にもつながる」としている。Seitz氏は、「電流と電圧からモーターの位置と回転数をニューラルネットワークで直接決定できるため、外付け部品なしで完全に管理できる画期的なソリューションだ」と述べていた。
会場では、この2つのソリューションによって三相ブラシレスモーターを制御するデモを実施していた。AURIX TC4xのデモでは、エンコーダーの入力値による制御とニューラルネットワークによる制御を切り替える様子を紹介しており、「通常のエンコーダーによる制御と同様の機能を実現している」と説明していた。
AURIX TC4xは先行顧客に向けたサンプル出荷を実施中で、量産開始は2024年後半を予定。なお、ARC MetaWare Toolkit for AURIX TC4xや、AURIX TC4xの仮想プロトタイプが可能なSynopsysの「Virtualizer Development Kit for TC4x」は既に提供中だ。
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