日本の前工程装置のシェアはなぜ低下? 〜欧米韓より劣る要素とは:湯之上隆のナノフォーカス(53)(4/5 ページ)
既出の記事で、日本全体の前工程装置のシェアが2013年頃から急低下していることを指摘した。本稿ではその現象をより詳細に分析し、シェアが低下している根本的な原因を探る。
トップ6以下の装置メーカーの成長性
今度はトップ6以下の装置メーカーの成長性を分析してみよう。図9は、トップ6以下の主な装置メーカーについて、それぞれ、2000年のITバブルの売上高を「1」として規格化したグラフである。
縦軸の規格化した売上高が対数軸であることに注意されたい。何と、韓国のSEMESが31.6倍に成長しているのである。もしリニア軸でグラフを書いた場合、SEMES以外の装置メーカーの成長がほとんど分からなくなってしまうため、止む無く対数軸で書いたわけだ。それにしても、SEMESの成長性はすさまじい。
SEMES以外では、成長率の高い順に、国際電気が2.91倍、欧州のASMIが2.02倍、SCREENが1.98倍、日立ハイテクが1.31倍、荏原製作所が0.81倍、Canonが0.67倍、Nikonが0.15倍となっている。荏原製作所、Canon、Nikonは、1倍以下でマイナス成長である。
次に、2011年の各社の売上高を「1」と規格化したグラフを書いてみた(図10)。やはり、SEMESが4.33倍と最も高い成長性を示している。次いで、ASMIが3.46倍、国際電気が2.47倍、荏原製作所が1.81倍、Canonが1.47倍、SCREENが1.04倍、日立ハイテクが0.97倍、Nikonが0.16倍となっている。
ここで、2倍を超えた日本の装置メーカーは国際電気だけであり、総じて日本企業の成長率は高くない。SCREENと日立ハイテクはほとんど成長しておらず、Nikonの成長率は大きくマイナスになっている。
装置の売上高ランキングのトップ10に入る日本の装置メーカーは多い。しかし、その成長性を分析してみると、韓国のSEMESや欧州のASMIに見劣りすると言える。
総括と今後の展望
欧米日韓の主な装置メーカーについて、その成長性と装置のポートフォリオを図11に示す。装置メーカー各社について、トップ5以上とトップ6以下に分けて、2000年からの成長率および2011年からの成長率を分析してきた。図11では、高い成長率を青、やや高い成長率を緑、普通の成長率を黄色、低い成長率をピンクで示した。
トップ5には、日本から唯一、TELがランクインしている。TELの2000年から、および、2011年からの成長率は、いずれも「やや高い」。従って、TELは健闘していると言えるが、ドライエッチング装置、CVD装置、洗浄装置で競合するLamの高い成長性には及ばない。
トップ6以下では、SEMESとASMIが、2011年から高い成長率を示している。その中で、国際電気が日本企業として唯一、2000年から、および、2011年からの成長率で「やや高い」評価となっており、健闘していると言える。しかし、それ以外の日本の装置メーカーで、高い成長性を示している企業は無い。それどころか、低成長の企業が散見される。
さらに、100億米ドルを超える装置分野に関わっている欧米企業は、おおむね、「高い」か「やや高い」成長性を示している。一方、日本の装置メーカーの成長性は、残念ながら、総じて、欧米韓の各企業に劣っていると言わざるを得ない。
日本の前工程装置のシェアが2013年以降に急低下している原因を分析してきた。その結論を述べれば、欧米企業4社が100億米ドルを超える装置分野に対して戦略的に集中してガッチリとシェアを確保しており、売上高の成長性で日本は欧米韓に見劣りすることがシェア低下の原因であると言える。では、日本の装置メーカーはどうすれば良いだろうか?
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