単結晶薄膜×接合技術で超音波センサー感度が20倍に:ガラス基板などにも接合可能(2/2 ページ)
沖電気工業(以下、OKI)とKRYSTALは2022年8月17日、単結晶の圧電薄膜とSOI(Silicon On Insulator)ウエハーの接合技術を確立し、圧電MEMSデバイスの性能を向上する「圧電単結晶薄膜接合ウエハー」の試作に成功したと発表した。
超音波センサーの感度が20倍に
圧電単結晶薄膜接合ウエハーの用途としては、まずは生体認証の分野を狙う。同ウエハーを用いてMEMS超音波センサーを試作したところ、多結晶圧電薄膜を用いた従来の超音波センサーに比べ、感度(送受信電力効率)が20倍以上になったという。OKIのコンポーネント&プラットフォーム事業本部 開発本部 LED応用開発部でチームマネージャーを務める谷川兼一氏は「KRYSTALの高性能な単結晶圧電薄膜を、いかに特性を維持しつつ剥離、接合できるかがポイントだった。今回の試作デバイスにより、特性を落とさず、既存のMEMSプロセスに適用できることが実証された」と語った。
超音波センサーの感度が向上することで、指紋認証から、よりセキュリティが高い指静脈認証を実現できる可能性があると谷川氏は説明する。指静脈を検知できるかどうかは今後検証を行う予定で、OKI コンポーネント&プラットフォーム事業本部 開発本部 本部長を務める佐藤義則氏は「デバイスメーカーの知見も必要になるので、ぜひ協業したい」と語った。
MEMSプロセス後のウエハー。検証用として4インチウエハーを用いた。見にくいが、ウエハー裏面にも薄膜が接合されていて、「MEMS加工前と加工後、どちらのウエハーにも圧電単結晶薄膜を接合できることを示している」(KRYSTAL)とする[クリックで拡大]
圧電単結晶薄膜接合ウエハーの製造は、KRYSTALの拠点(山口県宇部市)で成膜後、OKIの高崎工場(高崎市)にて剥離、接合する。
OKIにとって、MEMSデバイス分野への参入は初となる。カスタムウエハーの提供を開始する2023年度中に売上高100億円を目指す。佐藤氏は「圧電単結晶薄膜接合ウエハーにおいて、競合他社は、現時点ではいないという認識を持っている。実際の取引にはまだ至っていないが興味を示しているメーカーが多々あり、手応えを感じている」と語った。
なおKRYSTALは、PZT以外に、環境により配慮した鉛不使用のAlN(窒化アルミニウム)、LN(ニオブ酸リチウム)といった新しい材料の単結晶化にも成功している。KRYSTALとOKIは、こうした新材料を用いた圧電単結晶薄膜接合ウエハーの開発も並行して進めている。
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