フラッシュメモリ搭載の一般用デジタルカメラが相次いで発売される(1993年〜1996年):福田昭のストレージ通信(232) フラッシュメモリと不揮発性メモリの歴史年表(13)(2/2 ページ)
今回は、1993年〜1996年の出来事を取り上げる。一般用のコンパクトデジタルスチルカメラ(略称はコンパクトデジカメ、コンデジ)がフラッシュメモリあるいは小型フラッシュメモリカードによって普及し始めた時期だ。
初めてのフラッシュメモリ対応デジカメは富士写真フイルムの「DS-200F」
カシオ計算機の「QV-10」がフラッシュメモリを内蔵していたことから、フラッシュメモリ対応のデジカメは「QV-10」が世界初と思われる向きもある。これは誤解であり、フラッシュメモリに対応したデジカメは早くから存在した。筆者の調べでは、富士写真フイルムが1993年1月に発売した「DS-200F」が初めてのフラッシュメモリ対応デジタルスチルカメラのようだ。
「DS-200F」はメモリカードに画像データを記憶させる方式のデジタルカメラであり、2Mバイトのフラッシュメモリカードあるいは1MバイトのSRAMカード(コイン電池によるバックアップ方式)を記憶媒体として用意していた。フラッシュメモリカードを装着したときの撮影枚数は最大で40枚である。本体の大きさは106mm×62mm×奥行き145mm、本体(電池別)の重量は約520グラム。
価格は安くない。本体(税別)は22万円、2Mバイトのフラッシュメモリカードが6万5000円、1MバイトのSRAMカードが5万5000円もする。しかもメモリカードと画像フォーマットは独自形式だとみられる。PCに画像データを転送するためには別売りの「メモリカードプロセッサ DP-200F」と呼ぶオプションが必要だ。DP-200Fの価格は19万円もする。本体と2Mバイトのフラッシュメモリカード、メモリカードプロセッサを購入すると、単純合計(税抜き)で47万5000円もの金額になってしまう。
フラッシュメモリと不揮発性メモリの主な出来事(1993年〜1995年)。下線部がデジタルスチルカメラに関する項目とスマートフォンに関する項目(スマートフォンは次回以降で説明する予定)[クリックで拡大]
さすがにまずいと思ったのか。1995年11月にはPCカード(PCMCIAカード)を画像記憶媒体とする「DS-220」を富士写真フイルムが発売する。「DS-220」のニュースリリースではタイトル1行目に「パソコン専用CCD・ATA準拠PCカード採用」、本文に「JPEG準拠&正方画素データとして記録するのでパソコン入力時のデータ交換が不要」(パソコンに専用ソフトウェアをインストールしなくとも取り込めるとの意味)、「世界標準のATA準拠PCカードを採用。記録された画像をPCカードスロットに差し込むだけでパソコンで利用できます」とうたっていた。
希望小売価格(税別)は、本体「DS-220」が14万8000円、5Mバイトのフラッシュメモリ内蔵PCカード「HG-5」が3万5000円と、「DS-200F」に比べるとかなり安くなった。本体の大きさは107mm×55mm×奥行き146mm、本体(電池別)の重量は約490グラムでほぼ変わらない。外観のデザインもDS-200Fとかなり似ていた。
⇒「福田昭のストレージ通信」連載バックナンバー一覧
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- マスクROMの始まり(1950年代〜1960年代)
今回は、これまでほとんど知られていなかった、マスクROMのルーツが判明したので、その内容をお届けする。 - EPROMの進化とEEPROMの誕生(1970年代)
フラッシュメモリに関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット」で公開されるフラッシュメモリと不揮発性メモリの歴史年表。この歴史年表を過去から順に紹介していく。今回は、1970年代を解説する。 - ワイヤレス電力伝送の将来展望
今回は、本シリーズの完結回として「8. 将来への展望」の講演部分を紹介する。 - HDD大手Western Digitalの業績、ニアライン販売額が前年同期比で40%近く増加
米Western Digitalの2022会計年度第3四半期(2022年1月〜3月期)の業績を紹介する。 - Micronの四半期業績、3四半期連続で30%超の営業利益率を維持
Micron Technologyの2022会計年度第2四半期(2021年12月〜2022年2月期)の業績概要を紹介する。 - 埋め込みDRAMが大容量キャッシュの製造コスト低減に貢献
今回はDRAMをロジックLSIに埋め込む技術「eDRAM」の製品化事例を解説する。