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世界で初めてのスマートフォン「Simon」をIBMが開発(1994年)福田昭のストレージ通信(233) フラッシュメモリと不揮発性メモリの歴史年表(14)(2/2 ページ)

フラッシュメモリの歴史年表で1994年を取り上げる。IBMが世界で初めてスマートフォンを開発した経緯を紹介する。

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1994年8月からの半年間で5万台を販売

 開発の完了にメドが立った1993年11月2日、BellSouthは製品「IBM Simon Personal Communicator」を1994年3月に発売すると報道機関向けに発表した。製品の愛称「Simon」(サイモン)はBellSouthが考案したとされる。当時は「スマートフォン(Smartphone)」という言葉がなく、同様の意味で「パーソナルコミュニケーター(Personal Communicator)」と名付けられた。


1993年11月2日にBellSouth Cellularが「IBM Simon Personal Communicator」を発表したニュースリリース(一部を抜粋したもの)[クリックで拡大]

 「Simon」にはダイヤルがなく、タッチパネル付き液晶ディスプレイを介したグラフィカルユーザーインタフェース(GUI)によって数字(電話番号を含む)やテキストなどを入力する。ユーザーは液晶ディスプレイで電話用画面と「Mobile Office」と呼ぶコンピュータ用画面を切り替える。「Mobile Office」ではアイコンをタップすることでファクシミリ送受信、ポケットベル、電子メール送受信、電卓、世界時計、カレンダー(予定表付き)、住所録などのアプリケーションを利用できた。

 実際の発売は1994年8月16日である。ソフトウェアに不具合が見つかり、修正作業のために発売は当初の予定より遅れた。価格はBellSouthと2年間の回線契約を結ぶと899ドル、契約なしの場合は1099ドルである。1995年2月に販売を休止するまで、累計で5万台を販売した。仮に1台当たりの売り上げが1000ドルだとすると、およそ半年で5000万ドルを売り上げたことになる。商業的にはかなりの成功を収めたと言えよう。

 IBMのSimon開発チームは、既に後継機(開発コード名「Neon」)の開発に取り掛かっていた。しかしIBMは事業再編の一環として、ボカラトンオフィスの縮小を決定する。後継機の開発はCanovaのチームから別のチームが引き継ぐもうまくいかず、開発の継続が困難になる。IBMにおけるスマートフォンは残念ながら、これきりに終わった。


世界初のスマートフォン「Simon」(サイモン)の開発経緯。Canovaの個人サイト「Simon history」などの公表資料からまとめたもの[クリックで拡大]

 次回は「Simon」の概要と内部構成をご説明したい。

(次回に続く)

⇒「福田昭のストレージ通信」連載バックナンバー一覧

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