大競争時代が続く切手大の小型フラッシュカード(1997年〜2000年):福田昭のストレージ通信(236) フラッシュメモリと不揮発性メモリの歴史年表(17)(2/2 ページ)
今回は1997年〜2000年までの動きを追う。この時期に、切手大の小型フラッシュメモリカードが登場した。
ソニーが主導した汎用フラッシュカード「メモリースティック」
「メモリースティック(Memory Stick)」は、ソニーとオリンパス光学工業、カシオ計算機、三洋電機、シャープ、富士通が共同で開発し、1997年7月に発表した。デジタルオーディオやデジタルスチルカメラ、携帯型ビデオゲーム、携帯電話端末などの用途を想定した。発売は1998年10月である。当初の記憶容量は4Mバイトと8Mバイト(64Mビット)。
カード本体の外形寸法は長さが50mm、幅が21.5mm、厚みが2.8mmである。MMCに比べると細長い。長さは単3形乾電池と同じにそろえた。誤消去防止用のツメを備える。インタフェースは10ピンのシリアルインタフェースであり、MMCと同様に端子数を少なく抑えた。
MMCの上位互換として開発された「SDメモリーカード」
「SDメモリーカード(SD Memory Card)」(略称は「SDカード」)はMMCの改良版としてサンディスクと松下電器産業、東芝の3社が共同で開発した。1999年8月に3社がSDカードの共同開発と規格策定、普及活動で合意したのが始まりである。2000年1月には3社が規格策定と普及活動を担う業界団体「SDアソシエーション(SD Association)」を設立した。同年には製品のサンプル出荷が始まった。当初の記憶容量は32Mバイト(256Mビット)と64Mバイト(512Mビット)である。
MMCとSDカードは類似点が多い。SDカードの外形寸法は長さが32mm、幅が24mmである。この寸法はMMCに等しい。厚みは2.1mmで、MMCの1.4mmよりも厚い。なおSDカード本体は誤消去防止のスイッチを備える。
カード自体はMMCと同様に、コントローラーとフラッシュメモリを内蔵する。インタフェースは9ピンのシリアルインタフェースである。ピンのレイアウトにはMMCと互換性があり、SDカードのスロットにはMMCも装着できる(MMCが動作するとは限らない)。
「SDメモリーカード(SD Memory Card)」の外観。出所:No machine-readable author provided. Anton Rakitskiy assumed (based on copyright claims)., Public domain, via Wikimedia Commons
SDカードの重要な特徴に、著作権保護機能がある。デジタル音楽機器とデジタル映像機器の商品化によって劣化のない複製が可能になったことから、著作権を保護する機能が必要となった。
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