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これからの自動車を支える日本の半導体産業とは大山聡の業界スコープ(58)(1/2 ページ)

今回は、半導体業界にとって主要なアプリケーションの1つである自動車業界を例にとって、日本の半導体関係者が着眼すべきポイントについて、述べたいと思う。

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 前回、日本の半導体産業の「あるべき姿」について私見を述べたところ、多くの方々からコメントをいただいた。必ずしも全面的に賛同のコメントばかり、というわけではなかったが、筆者の着眼点や「このままではダメだ」という考え方には十分、賛同をいただけたと感じている。筆者としては「日本の半導体業界を復活させるために何ができるのか、何をすべきなのか、主張を続けることにはそれなりの意義がある」と自身に言い聞かせているところだ。今回は、半導体業界にとって主要なアプリケーションの1つである自動車業界を例にとって、日本の半導体関係者が着眼すべきポイントについて、述べたいと思う。

車載半導体、半導体市場の9%に過ぎないが……

 自動車向けの半導体、いわゆる車載半導体の市場規模は、2021年世界半導体市場の9%、金額にして約500億米ドルだったと(筆者が代表を務める)グロスバーグでは推定している。半導体市場の30%以上を占める情報機器市場や通信機器市場に比べれば、決して大きな市場とはいえないが、着目すべき理由として、以下のような点が挙げられる。

① 日本の半導体メーカー各社は、最先端プロセスを必要とするメモリやロジック分野に対して、一部の例外を除けば撤退や縮小という戦略が取られ、MCU、アナログ、ディスクリートといった分野への注力がみられる。これらのデバイス分野は、車載および、産業機器向けの需要が相対的に大きいことが特長で、日系各社にもこれらの分野に注力している企業が多い。

② 車載および、産業機器向けの半導体需要は、他のアプリケーションに比べて今後の変化が大きく、市場構造自体も変わる可能性が高い。特に自動車業界は、CASEが推進されることによって自動車メーカーのビジネスモデルまで変化を余儀なくされている。車載分野については、半導体を提供する側も使用する側も、大きな構造変化を前提に戦略を立てる必要がある。

 では、自動車業界はどのように変わろうとしているのか。世界中の自動車メーカーのビジネスモデルを揺るがそうとしているCASEがもたらす変化とは、具体的にどのようなものなのか。ここで一度、復習してみよう。

  • Connected/通信機能
    • 「V2X」機能は、新車販売の際に設置が義務付けられつつある。

 クルマの巨大なIoTシステムの端末として位置付ける考え方で、クルマへのデータ配信、クルマからのデータ送信、双方を活用してさまざまなサービスが実現されることだろう。ハードウェアとしてはクルマの中にセルラーモジュールを1つ搭載する程度の変化なので、半導体業界への影響は限定的と思われる。

  • Autonomous/自動運転
    • レベル1、2は比較的簡素だが、レベル3以降はシステム構成が複雑になる。

 センサーから入力された情報を自動運転ソフトウェアと組み合わせる、というアプローチは、Waymo(Google)、Mobileye、ソニーなどのセンサーメーカーが自社製のプラットフォームを提供する戦略を打ち出している。これに対して、ドライバーのノウハウをAIプロセッサで実現させるアプローチは、自動車メーカー自身による戦略をNVIDIAなどがサポートしながら進められている。

 Tesla、Appleのように、AIプロセッサを自力で開発する企業もあるが、レベル4の実現にはセンサーからとAIプロセッサからの両アプローチの組み合せが重要になるだろう。

  • Shared & Services/共有化・サービス化
    • 新車販売台数が減少するような影響があれば、車載半導体全体にもマイナスか。

 トヨタ自動車やFord Motorなどが、これに関連するサービスを自社で立ち上げようと画策しているようだ。かつてIBMが、大型コンピュータの販売を中心としていたビジネスモデルを、これを活用したサービスに切り替えることができたように、自動車業界でも同様の変化を実現できるかどうか。ハードルは高そうだが、自動車メーカー自身によるチャレンジには注目したいものだ。半導体業界への影響は、あまり大きくないと言えそうである。

  • Electric/電動化
    • 電気自動車(EV)ではエンジン制御用半導体が不要になり、モーター、電池の調達が重要になる。

 これまでエンジン開発に心血を注いできた自動車メーカー各社は、大きな方向転換を余儀なくされることになる。半導体メーカーにとっても、エンジン制御MCUで市場を寡占してきたルネサス エレクトロニクス、NXP Semiconductors、Infineon Technologiesの優位性に大きな影響を与えそうである。同時に、電動化に不可欠なパワー半導体の需要がすでに急増しており、市場ではIGBT、MOSFETといったパワートランジスタの奪い合いが繰り広げられている。

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