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住友電工、ポスト5Gに向けた「GaN-HEMT」を開発:より高出力、高周波の要求に対応
住友電気工業は、GaN結晶にN極性を、ゲート絶縁膜にハフニウム(Hf)系の高耐熱高誘電材料を用いた「窒化ガリウムトランジスタ(GaN-HEMT)」を開発した。ポスト5G(第5世代移動通信)用通信機器に向ける。
ゲート絶縁膜にHf系高耐熱高誘電材料を採用
住友電気工業は2022年10月、GaN結晶にN極性を、ゲート絶縁膜にハフニウム(Hf)系の高耐熱高誘電材料をそれぞれ用いた「窒化ガリウムトランジスタ(GaN-HEMT)」を開発したと発表した。ポスト5G(第5世代移動通信)用通信機器に向ける。
高周波増幅器などに用いられるGaN-HEMTはこれまで、Ga極性(面方位0001)が一般的に採用されてきたという。ポスト5Gでは、さらなる高出力化や高周波化への対応が求められている。
そこで注目されているのが、逆HEMT構造を実現できるN極性(面方位000-1)の結晶である。ただ、N極性の結晶は「ヒロック」と呼ばれる異常成長部により凹凸が発生しやすいことや、逆HEMT構造とするためには良質なゲート絶縁膜の開発が必要になるなど、課題もあった。
住友電気工業は今回、長年蓄積してきた結晶成長技術をベースに、ヒロックのないN極性の結晶を実現した。また、ゲート絶縁膜にHf系高耐熱高誘電材料の一種を適用することで、良好な高周波特性を持つN極性結晶のトランジスタの開発に成功したという。
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