マルチコアファイバーを収容した海底ケーブル:NECとOCC、住友電気工業が開発
NECとOCC、住友電気工業は、非結合型のマルチコアファイバーを収容した海底ケーブルを開発した。伝送容量を大幅に拡大することで、国際的なデータ通信の需要増に対応できるという。
非結合型4コアファイバーを32心収容、最大128コアでの伝送
NECとOCC、住友電気工業は2021年10月、非結合型のマルチコアファイバーを収容した海底ケーブルを初めて開発したと発表した。伝送容量を大幅に拡大することで、国際的なデータ通信の需要増に対応できるという。
海底ケーブルの外形を変えずに、伝送容量を拡大する方法として、空間分割多重(SDM)技術などが注目されている。その1つが、マルチコアファイバーケーブルの活用である。マルチコアファイバーケーブルは、クラッド内に光を伝搬させるコアが複数あり、1本のケーブルにそれぞれ独立した伝送路を設けることができる。
今回開発したマルチコアファイバーケーブルでは、非結合型4コアファイバーを適用した。シングルコアファイバーケーブルに比べ、4倍のコア数となる。開発した海底ケーブルには、非結合型4コアファイバーを32心収容できるため、最大128コアによる伝送が可能となった。
開発した海底ケーブルには、OCC-SC500シリーズのLW(Light Weight)ケーブルを用いた。このケーブルは、外径17mmと細いが水深8000mの海底でも耐えうる強度を備えている。荷重も小さくケーブルに必要な材料費を安く抑えるなど、従来品と比較してコストの削減が可能だという。
開発したマルチコアファイバーケーブルを用い、利用環境を想定して水中・長距離の伝送試験を行った。この結果、ファイバーの光学特性に大きな変化はなく、良好な伝送性能を得ることができたという。
3社は今後、「マルチコアファイバー量産化技術の開発」や「長期利用における信頼性の検証」「マルチコアファイバーに対応した海底光中継器の開発」などの取り組む予定である。
なお、今回のケーブルは、総務省の「ICT重点技術の研究開発プロジェクト」における研究開発課題「新たな社会インフラを担う革新的光ネットワーク技術の研究開発」の技術テーマである「マルチコア大容量光伝送システム技術」の一部として開発した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ポスト5G基地局装置の相互接続性検証技術を開発へ
NECと富士通は、ポスト5G(第5世代移動通信)に対応する基地局用装置(O-RAN仕様準拠)間の相互接続性検証に必要となる技術の開発を、英国(NEC)と米国(富士通)のラボで始める。 - NEC、数秒間のサンプル映像から類似行動を検出
NECは、数秒間のサンプル映像を与えるだけで、類似の行動をライブカメラなどの映像から見つけ出すことができる「オンデマンド行動検出」技術を開発した。 - 住友電工、高精度の温度分布制御システムを開発
住友電気工業は、枚葉式半導体成膜装置向けの高精度温度分布制御システム「SumiTune(スミチューン)」を開発した。ウエハー成膜工程における面内の温度分布の高均熱化を実現しており、成膜の生産性と膜厚均一性の両立を可能にした。 - 住友電工、フッ素樹脂FPCの量産化に成功
住友電気工業は、ミリ波帯において伝送損失が低く、柔軟性にも優れたフッ素樹脂のフレキシブルプリント基板(FPC)「FLUOROCUIT(フロロキット)」を開発し、量産化に成功した。 - 38コア・3モードファイバーで毎秒10Pビット伝送
情報通信研究機構(NICT)ネットワークシステム研究所と住友電気工業、オプトクエストは、38コア・3モードファイバーを用いて毎秒10.66P(ペタ)ビットの伝送実験に成功した。周波数利用効率は1158.7ビット/秒/Hzを達成している。 - 統合型3コア光ファイバーで大容量長距離伝送
情報通信研究機構(NICT)とNOKIA Bell Labs(ベル研)の研究グループは共同で、標準外径(クラッド外径:0.125mm)結合型3コア光ファイバーを用い、毎秒172Tビットで2040kmの伝送実験に成功した。伝送能力は351Pビット×kmで、従来に比べ約2倍となる。