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「新しい資本主義」をエンジニア視点で考えてみる「お金に愛されないエンジニア」のための新行動論(8)(2/9 ページ)

今回は「新しい資本主義」について考えてみます。きっかけは嫁さんの「新しい資本主義って何だろうね」というひと言。これを調べていくと、「令和版所得倍増計画」なるものの実施が絶望的に難しそうであることが明らかになってきました。

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「金のにおい」が皆無の「新しい資本主義」

 さて、ここから本論の「新しい資本主義」の話を始めたいと思います。下の図は、「新しい資本主義」でググって出てきたページの内容を、私なりにまとめたものです。

 ―― とまあ、このようにまとめてみたのですが、『なるほど! そういうことか!!』という感じに、(私は)なれませんでした。ざっくりと、「政府が、この4分野に投資して、その売り上げを分配するんだな」ということは分かりましたが ―― で、それは、今まで政府のやってきたことと、何が違うの? が分からないのです。

 私、デジタルについては、かなり現場に近い場所にいるので、いろいろよく知っています。特に「(1)科学技術点イノベーション」「(2)デジタル地方活性」については、ほとんど、ど真ん中の立ち位置にいると思います(例:各種の国家プロジェクトや、地方行政DXやら、なんやら)し、私が今の研究所に入ってから、ずっと見てきました ―― で、これらの投資が、分配につながっている、という実感は、正直”ゼロ”です

 「(3)カーボンニュートラル」は、まあなんとか理解できるとして、「(4)経済安全保障」という用語を知らなかったので調べてみたところ、どうやら、『(A)食べ物とエネルギーの確保』『(B)社会インフラの安定運用とメンテ』『(C)科学技術の(サイバーテロ等)からの保護』『(D)特許の非公開化』ということらしいですが ―― これって、もうかるかなぁ? という感じがします。

―― ぶっちゃけて言えば、金の”におい”がしない

 ぶっちゃけついでに、分配戦略のところも見てみたのですが、私が徹底的に「怪しい」と思うのが、『労働移動の円滑化』というヤツです。加えて言えば、ここでの労働移動とは、”デジタル分野への移動”ですが ―― 本当に簡単に言ってくれるなぁ、と思います。

 WordPressの設定ができることや、htmlでWebページの作成ができることを、「デジタル業務」と思っているんじゃなかろうな、と心配しています。

 まさか、デジタル分野を、『教師がリモート授業のセッテイングをすること』と同じとは思っていないと思うのですが ―― いいですか。デジタル研究の先端にいた私ですら、思い通りにできないWordPressの画面設定にイラつき、AWS(Amazon Web Service)のセキュリティ設定で悲鳴を上げているのです ―― 正直、デジタルをなめるな、と思っています。

 もし、このデジタル分野の労働移動を主張するのであれば、総理大臣が議員辞職して、5年ほどITエンジニアとなって働いて、その後、国政に戻ってくる ―― ということをやってもらえれば、私も、『なめるな』という失礼な暴言を撤回し、心から謝罪したいと思いますが、まあ無理でしょう。政治に関わる人間のITリテラシーなんて、しょせん、この程度ですから。

「KPI」が見当たらない

 さらに、分からなかったのは、「③全ての人が生きがいを感じられる社会の実現」に記載されている内容です。私には、これが、新しい資本主義を実現するための「アプローチ(実現手段)」なのか、新しい資本主義で実現したい世界「アウトカム(実現したいこと)」なのか、分かりませんでした(理解できている方は、私に教えてください)。

 総じて、このホームページから感じるモヤモヤ感が何なのかを考えていたところ、KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)がないことに気が付きました。簡単に言えば、「達成すべき、目標数値の記載がない」ということです。

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