「新しい資本主義」をエンジニア視点で考えてみる:「お金に愛されないエンジニア」のための新行動論(8)(3/9 ページ)
今回は「新しい資本主義」について考えてみます。きっかけは嫁さんの「新しい資本主義って何だろうね」というひと言。これを調べていくと、「令和版所得倍増計画」なるものの実施が絶望的に難しそうであることが明らかになってきました。
中国はKPIの“バケモノ”だった
一方、わが国を抜いて、GDP世界第2位となった国、中国について、中国国務院資料の「第14次5ヶ年計画(2021−2025年)」の内容を読んでみたのですが ―― すごい。KPIのバケモノでした。
まず、目標設定として「(1)科学技術・イノベーション」がトップであるのは、わが国と同じです。「科学技術が、国家の行く末を決める」というのは、歴史的に見ても明らかです。『私は文系だから関係ない』だの、『三角関数は必要な人だけが学べばいい*)』だのと、科学技術からの”逃げ”を声高らかに主張して、多くの賛同が得られるこの国(日本)は、本気でヤバいと思っています。
*)関連記事:「リカレント教育【前編】 三角関数不要論と個性の壊し方」
「(2)製造+サービス業」というのは、最近よく言われる「モノからコトへ」と同義です。中国がGAFAの後釜を狙っているのは自明ですが、日本にその気概があるかは、分かりません。
それと「(3)国内市場の形成」ですが、これが、14億人の人口を持つ中国の強みです。これは、簡単に言えば「国内市場だけで閉じた経済圏を作ればいいじゃん」ということです。一言で言えば「外国なし(貿易なし)で、鎖国しても生きていける国」を目指すということです。一方、わが国は、海外との貿易なしとなれば、国民の生命は保証できません。
計画の骨子はともあれ、この計画のすごいところは、KPIの内容です。
特に「(B)のイノベーション」を見て頂きたいのですが、びっくり仰天なのが、「特許保有数/人」です。この”人”は、一般人も含む人数です。つまり、「特許出願」が、(直接、特許明細書を書かなくとも)国民の義務と見なされているのです。中国国民は、『私は文系だから関係ない』などという言い訳は、許されないのです*)。
*)「三角関数は不要」などと言った矢先には、国家権力から処罰を受けるのではないか、と思えるほどです。
そして、GDPについても、ただのGDPとは区別して「デジタル(技術/サービス)が生み出したGDP」と区別して、きちんと計算して出せ、と言っています。ただ「もうかった」だけではダメで、デジタルでもうけろ、そして、その成果を数値で明らかにしろ、と言っているのです。
「(C)の福利厚生」についても、国家が目を光らせている様子が伺えます。託児所の数から、自分の寿命に至るまで、きっちりと数字で監視・管理されて、全く油断できない ―― うかつに自殺もできやしない ―― という感じがヒシヒシと伝わってきます。
ともあれ、
―― なるほど、こうして、わが国は、GDPで中国に負けたのか
と深く納得しました。
2030年には、アメリカも中国に負けるという予想があります―― 中国が、このまま、変な事件(紛争とか戦争とか)を起こさずに、技術と数字で、がっちりと国を運営し、国民を管理し続ければ、十分あり得る未来だと思います(ただ、個人的には、国家権力に、数値で尻をたたかれる国の国民になりたいか、と問われれば ―― うん、私なら、そういうノルマのない国に亡命したくなると思いますが)
まあ、中国のことはよいとして、私は、この「新しい資本主義」に、目標に対する目指すべき数値の記載がない、ということに、大いに「引っ掛かっている」のです。
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