チップレットvs. 1シリコン化、AMDとIntelの戦略を読み解く:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(68)(1/3 ページ)
残りわずかとなった2022年。後半になって大型プロセッサが続々と発売されている。今回は、AMDの「Ryzen 7000」とIntelの「第13世代 Intel Core」シリーズの解析結果から、両社のチップ戦略の違いを読み解く。
2022年は半導体が多くのニュースに取り上げられ、話題に事欠かない。「半導体不足」という言葉は今や日常語の一つにさえなっている。そんな2022年も残りわずかだが、後半になって大型プロセッサが続々と発売されている。品薄のチップも多く、入手にやや難があるものの、弊社はできる限り購入してチップを開封し、解析を続けている。
現在はもとより、前職時代やシリコンバレー勤務時代を含めて、半導体を長年観察し続けてきたが、過去に経験がないほど、2022年は多くのチップが登場している。解析が間に合わないほどである。続々と新しいチップが出てくるので、入手はできてもチップ開封が後回しになってしまうのだ。
モバイル系プロセッサも2023年にかけて続々と発表されている。Qualcommの「Snapdragon 8 Gen 2」、MediaTekの「Dimensity 9200」などは、入手次第チップ開封解析を行う予定である。今回は、AMDの「Ryzen 7000」とIntelの「第13世代 Intel Core」シリーズを取り上げる。
図1は、2022年9月にAMDから発売されたRyzen 7000シリーズの外観である。同時期に発売された最上位の「Ryzen 9 7950X」、ミドルモデルの「Ryzen 5 7600X」を取り上げる。Ryzen 7000シリーズは第4世代の「Zen」アーキテクチャ「Zen4」をCPUとする。プロセッサ上部には異形のLIDが乗っていて、凹部分にはキャパシターが埋め込まれている。
Ryzen 9 7950XはCPUが16コア/32スレッド、L3キャッシュが64MB。Ryzen 5 7600XはCPUが6コア/12スレッド、L3キャッシュは32MBとほぼ半分の仕様になっている(ちなみにRyzen 5 7600Xの上位には「Ryzen 7 7700X」が存在し、こちらは8コア/16スレッド)。LID下には、最上位のRyzen 9 7950Xにはシリコンが3個、下位のRyzen 5 7600Xには2個搭載されている。CHIPLET(チップレット)と呼ばれる実装方式だ。IOシリコンとCPUシリコンの2つを組み合わせることで、さまざまな仕様を生み出せるという利点がある。前々世代の「Ryzen 3000」シリーズからAMDが活用している技術だ。PC向けではCPUシリコンを1個、2個と搭載数を変え、ハイエンドからローエンドまでのラインアップを形成し、HPC(高性能コンピューティング)向けではIOシリコンを変え(チャンネル数が多いもの)、CPUシリコンを4個、8個と増やすことで性能および機能を向上したラインアップを作り上げている。
図2は、Ryzen 9 7950Xのシリコンを開封した様子である。シリコンはパッケージに面実装されており、取り外して反転させることで回路面が見えてくる。IOチップはTSMCの6nmプロセスノードで製造されている。シリコン上には、顕微鏡でしか見ることができないが2021年の年号とAMDのロゴが搭載されている。前世代のIOシリコンよりも高い性能を、若干小さい面積で実現する。CPUシリコンは2個ともに同じもの。TSMCの5nmで製造されている。前世代の7nmから大幅に面積が削減されている。シリコン上にはAMDロゴや年号情報などは存在していなかった。
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