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IOWNで、120kmの遠隔でも”普段通り”の手術を実現地方へ最高峰の医療提供を

NTTは2022年11月15日、遠隔手術の実現に向け、国産の手術支援ロボット「hinotori サージカルロボットシステム」(以下、hinotori)を提供するメディカロイドと共同実証を開始したと発表した。NTTの「IOWN オールフォトニクス・ネットワーク」(以下、APN)と接続し、低遅延でゆらぎの少ない通信を活用することで、医師不足が深刻化する地方でも専門医の手術を受けられる環境作りを目指す。実証環境は2022年11月16〜18日に開催される「NTT R&D フォーラム ―Road to IOWN 2022」で展示された。

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 NTTは2022年11月15日、遠隔手術の実現に向け、国産の手術支援ロボット「hinotori サージカルロボットシステム」(以下、hinotori)を提供するメディカロイドと共同実証を開始したと発表した。NTTの「IOWN オールフォトニクス・ネットワーク」(以下、APN)と接続し、低遅延でゆらぎの少ない通信を活用することで、医師不足が深刻化する地方でも専門医の手術を受けられる環境作りを目指す。実証環境は2022年11月16〜18日に開催される「NTT R&D フォーラム ―Road to IOWN 2022」で展示された。

左=模擬手術室/右=hinotori本体[クリックで拡大]

外科医の減少という課題解決に向けて

 医療現場の課題についてメディカロイドの担当者は「現在日本では外科医の成り手が減っている。特に地方では外科医が不足しており、専門医の治療を受けるために長距離の移動が必要で患者に負担がかかっている」と説明した。日本医師会総合政策研究機構によると、日本の医師は2010年から2020年にかけて約4万3000人増加した一方で、外科医は2000人減少している。日本外科学会は減少の理由について「外科医は専門資格を取得するのに時間がかかり生涯労働時間が短いこと、勤務時間が長いこと」などを挙げている。

 APNとは、ネットワークから端末まで、すべてにフォトニクス(光)ベースの技術を導入することで、現在のエレクトロニクスベースの技術を大きく上回る低消費電力、高品質/大容量、低遅延の伝送を実現する技術だ。

 今回、NTTとメディカロイドはNTT武蔵野研究開発センター内に、APNの実証環境(伝送距離120km)を構築し、その環境下でhinotoriを接続することで、通信の遅延/ゆらぎがほぼ無いロボット制御を実現すると同時に、手術映像を非圧縮による超低遅延(200分の1秒)かつ高セキュリティな状態で伝送する実証を行った。なお、hinotoriは2020年8月に泌尿器科領域での製造販売承認を取得しており、現在は泌尿器科、消化器科、婦人科などで600症例を超える使用実績があるという。

筆者もデモ体験!約10年ぶりに触れる医療ロボット

 2022年11月14日に同施設で行われたメディア向け説明会では、筆者もAPNを接続したhinotoriの遠隔医療デモを体験した。筆者としては、高校生時代に大学の医学部体験ツアーで医療ロボット「ダビンチ」を操作して以来、約10年ぶりの医療ロボットであり、興奮が止まらなかった。

左=hinotoriの操作に集中する筆者/右=操作している手元の映像[クリックで拡大]

 遠隔医療の実証環境は、hinotori本体と模擬手術室を120km分の光ファイバーでつなぎ、8Kカメラで撮影した映像を転送することで再現していた。デモではゴムでできた多数の山に輪ゴムを載せたり外したりする作業を体験したが、筆者の体感ではラグを感じないほどの低遅延で、映像も高精度で違和感はなかった。


光ファイバードラム[クリックで拡大]

 説明担当者は、今回の共同実証について「手術ロボットの遠隔操作は、ネットワークでの遅延やゆらぎの影響を大きく受けるため、執刀医がストレスなく、”普段通り”の感覚で手術を行えることが必要だ」と取り組みの重要性を述べた。今後もAPN環境下での共同実証を進め、遠隔の薬事承認の取得、実現場での運用開始を目指すとしている。

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