ニュース
早稲田大ら、CO2を選択的に吸着、脱離可能に:外部電位のスイッチ一つで
早稲田大学と韓国Hanyang大学は、スイッチ一つで二酸化炭素を選択的に吸着、脱離できることを理論的に解明した。開発した技術を応用すれば、CO2を効率よく回収し濃縮することができるという。
必要なときに、必要なだけ、効率よく二酸化炭素を回収・濃縮する
早稲田大学理工学術院の関根泰教授らによる研究グループは2022年11月、韓国Hanyang大学と共同研究により、スイッチ一つで二酸化炭素(CO2)を選択的に吸着、脱離できることを理論的に解明したと発表した。開発した技術を応用すれば、CO2を効率よく回収し濃縮することができるという。
CO2を回収する方法はこれまで、いくつか提案されてきた。ところが液体を用いた現行の回収方式だと、比較的容易に回収できる半面、放出時に多くのエネルギーを消費するなど、課題もあった。
こうした中で、早稲田大学らが提案したのは、構造を制御した固体酸化物材料に、外部から電位を与えると、CO2を選択的に吸着したり放出させたりできる方式である。具体的には、希土類酸化物に異種の元素をドープした材料を用いた。
この材料に外部から「プラス」と「マイナス」の電位を与え、CO2の吸着と脱離を調べた。セリウム酸化物に異種金属を導入した材料に、プラスの強い電位(電流は流さない)を与えたところ、CO2を選択的に吸着した。一方、マイナスの電位に切り替えると、CO2は脱離することが分かった。
これらの研究成果は、小型でオンデマンド駆動が可能な乾式のCO2回収・濃縮プロセスを実現できる可能性を示したものだという。今後は、CO2オンデマンド回収装置を作製し、低エネルギーで回収、濃縮することができることを実機で検証していく計画である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 日欧連携で300GHz帯双方向リアルタイム伝送に成功
早稲田大学らによる国際共同研究グループは、世界初となる「300GHz帯双方向リアルタイム伝送」に成功した。テラヘルツ通信は、Beyond 5G/6Gシステムにおいて、基地局間を接続する方法の1つとして注目されている。 - NIMSら、多孔性で極薄の炭素ナノシートを合成
物質・材料研究機構(NIMS)と早稲田大学らによる国際共同研究チームは、有機金属構造体(MOF)と呼ばれる物質を新たな手法で剥がし、その後に炭素化することで「多孔性炭素ナノシート」を合成することに成功した。燃料電池や二次電池への応用が期待できるという。 - BAWフィルター用圧電薄膜の電気機械結合係数向上
早稲田大学は、スマートフォン向けBAW(バルク弾性波)フィルターにおいて、AlN(窒化アルミニウム)圧電薄膜の電気機械結合係数を、従来比で最大約1.4倍に増やすことに成功した。また、理論計算によって電気機械結合係数の向上に関するメカニズムも解明した。 - NICTら、ミリ波信号を光ファイバーに直接伝送
情報通信研究機構(NICT)は、住友大阪セメントや早稲田大学と共同で、ミリ波無線受信機を簡素化できる光・無線直接伝送技術を開発、受信した高速ミリ波無線信号を光ファイバーへ直接伝送することに成功した。