R-Car用開発ツール、AIソフトの開発サイクル短縮:ルネサスとフィックスターズが開発
ルネサス エレクトロニクスとフィックスターズは、AD(自動運転)やADAS(高度運転支援システム)向けAIソフトウェアを車載用SoC「R-Car」に最適化し、シミュレーションを高速実行できるツール群を共同開発した。
第1弾は「ネットワークモデル生成」「コンパイル」「動作検証」用ツール
ルネサス エレクトロニクスとフィックスターズは2022年12月、AD(自動運転)やADAS(高度運転支援システム)向けAI(人工知能)ソフトウェアを車載用SoC(System on Chip)「R-Car」に最適化し、シミュレーションを高速実行できるツール群を共同開発したと発表した。その第1弾として、最大34TOPSのディープラーニング性能を低消費電力で実現するAD/ADAS用「R-Car V4H」向けツールの供給を始めた。
ADやADASでは、高精度の物体認識を実現するために深層学習などが用いられる。この推論処理をリアルタイムで実行するには、高性能な演算器やメモリ容量が必要となる。このため、車載用SoCでこうしたAI処理を行うには、ネットワークモデルや実行プログラムを、搭載するSoCに合わせて最適化する必要があるという。
そこで両社は、AIソフトウェアをR-Car向けに最適化するためのツール群を共同で開発した。今回開発したのは3種類である。R-Carに最適な深層学習ネットワークモデルの生成用ツール「R-Car NAS(Neural Architecture Search)」、最適化したネットワークモデルをR-Car用にコンパイルするツール「R-Car DNN Compiler」および、コンパイルしたプログラムの動作検証を、PCで高速にシミュレーションするツール「R-Car DNN Simulator」である。
R-Car NASを用いると、R-Carに対する十分な知識がなくても、軽量なネットワークモデルを早期に開発できるという。R-Car DNN Compilerを活用すると、高速で小容量のSRAMを最大限活用できるよう、メモリの最適化を行うことができる。また、R-Car DNN Simulatorは、R-Carの実チップを使わずに同等の演算結果が得られる。このため、推論処理の認識精度が期待値より低い場合などは、ネットワークモデル開発へ迅速にフィードバックすることで、開発サイクルを短縮できるという。
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