WBGパワーデバイス事業を加速するInfineon:わずか4年でSiCの採用分野は激変(3/3 ページ)
Infineon Technologies(以下、Infineon)にとって、パワーデバイスは長年、注力事業の一つである。特に近年は、カーボンニュートラルをはじめ、グリーン化社会の実現に向けて省エネが強く求められる中、SiC/GaNなどのWBG(ワイドバンドギャップ)パワーデバイス事業を強化している。
生産能力増強に積極投資
パワーデバイス市場の強い成長予測を背景に、Infineonは生産能力の増強にも力を入れる。2022年2月には、20億ユーロ以上を投じてマレーシア・クリムの拠点にSiC/GaNパワーデバイスの新たな前工程工場を建設すると発表。同年11月には、50億ユーロを投じ、ドイツ・ドレスデンに300mmウエハー対応工場を新設すると発表した。後者の50億ユーロの投資は、Infineonの単独投資としては過去最大規模になるという。
2021年9月には、オーストリア・フィラッハの拠点に新設した300mmウエハー対応工場で、Siパワーデバイスの製造を開始。そのため、同拠点でこれまでSiパワーデバイスを製造していた150mm/200mmウエハーの生産ラインを、そのままSiC/GaNパワーデバイスの製造に移管していく計画だ。
Friedrichs氏は、「当社はさらに、SiCのバリューチェーン全体の最適化を図る取り組みも進めている」と述べる。鍵の一つとなるのが、2018年に買収したドイツの新興企業、Siltectraの「Cold Split」技術だ。これは、1枚のウエハーを水平方向にスライスし、2枚のウエハーに分割する技術である。単純に計算すればチップをこれまでの2倍製造できることになり「歩留まり向上と低コスト化に貢献する」と同氏は説明する。同技術はドレスデン工場のパイロットラインで既に適用されていて、顧客に出荷している製品もあるという。
Friedrichs氏は、日本での主なSiC/GaNパワーデバイスのアプリケーションについて、再生可能エネルギーや蓄電池、EVチャージャーを挙げた。さらに、日本に限らず「成長の速い分野でSiCの採用率が高いことが重要なポイントだ。とはいえSiパワーデバイスにもまだ技術的改善の余地があり、当面はSiCとSiですみ分けが続くだろう」と付け加えた。
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