Wolfspeed、ドイツに200mmウエハーSiC工場新設へ:「世界最大かつ最先端のSiC工場」
Wolfspeedは2023年2月1日(米国時間)、ドイツ・ザールラント州エンドルフに200mmウエハーのSiC(炭化ケイ素)工場を建設する計画だと発表した。
Wolfspeedは2023年2月1日(米国時間)、ドイツ・ザールラント州エンドルフに200mmウエハーのSiC(炭化ケイ素)工場を建設する計画だと発表した。欧州委員会による国家補助の承認が条件で、承認を受け次第、2023年上期にも着工し、2027年に生産開始する計画だという。
20億ユーロ以上を投じ、2拠点目の200mmSiCウエハー工場建設
同社は2022年4月、米国ニューヨーク州モホークバレーに200mmウエハーのSiC工場を開設した他、同年9月にはノースカロライナ州に主に200mmのSiCウエハーを生産する材料工場の建設を発表(2024年度末に第一期工事が完了予定)するなど、総額65億米ドル規模の能力拡大計画を進めている。
今回の新工場もこの計画の一環といい、ドイツ・ザールラント州エンドルフにある約14ヘクタールの旧石炭火力発電所跡地に20億ユーロ以上を投じ、「世界最大かつ最先端のSiCデバイス製造施設」を建設する計画だ。
ノースカロライナ工場で生産されたSiCウエハーはモホークバレーとザールラントの両工場に供給される予定で、垂直統合型の製造によって安定した供給を実現するという。同社は、「欧州におけるSiCデバイス製造拠点の拡大は、加速する顧客需要に対応し、2027年度に40億米ドルという当社の収益見通し実現を後押しするだろう」としている。
「完全に自動化された」200mmSiCウエハー工場
同社によると、新工場は「完全に自動化された」高度な200mmSiCウエハー工場となり、車載向けを中心に、産業および再生可能エネルギー用途向けのSiCパワー半導体を製造する予定だ。本格稼働時には新たに600人以上の雇用が創出されることになる。なお、新工場では「再生水の利用や排出量削減など革新的な持続可能性措置を採用する」とも説明している。
同社はこの日、ドイツの自動車部品メーカーZF Friedrichshafen(以下、ZF)と戦略的パートナーシップを締結したとも発表。ZFはWolfspeedの普通株と引き換えに、新工場建設支援として数億米ドル規模の大規模投資を行う予定だという。この投資によってZFは同工場の少数株主となるが、工場の運営/管理権は全てWolfspeedが維持する。
また、ZFはWolfspeedと、ドイツにSiCの共同研究開発センターも設立を計画していると発表した。同センターでは、民生、商用、産業用などのあらゆるモビリティ分野および再生可能エネルギー分野における特定要件を満たすSiCシステム/デバイスのイノベーションに注力。電動化ソリューションの高効率化や電力密度向上、高性能化などの実現に取り組んでいく予定だという。
なお、新工場および共同研開発センターの計画は、EUの「マイクロエレクトロニクスと通信技術に関するIPCEI(欧州共通利益に適合する重要プロジェクト)」の枠組みの下で、欧州委員会による国家補助の承認を条件としている。
「SiCは省エネルギーという課題の答え」
Wolfspeedはこの日、建設予定地のザールラント州エンドルフで記者会見を実施。会見には、同社CEO(最高経営責任者)のGregg Lowe氏やZFのCEO、Holger Klein氏の他、ドイツ首相のOlaf Scholz氏やドイツ経済・気候保護大臣のRobert Habeck氏、ザールラント州首相らも出席した。
Lowe氏は、「SiCは現代の大きな課題である省エネルギーに対する答えだ。当社は過去35年、SiCの開発と応用のパイオニアとして取り組みを続けてきた。新工場によってかつて石炭を燃やす発電所だったこの場所に、よりよいクリーンな産業の未来への懸け橋を掛けたい」と述べた。
Scholz氏は、「新しい半導体工場は、欧州の産業界における、信頼性の高いサプライチェーン構築に大きく貢献するだろう。われわれは、近年のサプライチェーン寸断や半導体不足によって、それがいかに重要であるかを理解している。パンデミックの経験から、ドイツや欧州ではよりレジリエンスを高めなければならないことを学んだ」などと語り、新工場への期待を示していた。
また、Habeck氏は「『メイド・イン・ザールラント』チップに関するドイツと米国の協力は、グリーン経済発展に向けた意思表示であり、われわれの革新的な強さと競争力を証明するものだ」などと述べていた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- Wolfspeed、SiC工場拡張に50億米ドルを投資
SiC(炭化ケイ素)とGaN(窒化ガリウム)デバイスに特化したワイドバンドギャップ半導体メーカーであるWolfspeedは、減速の兆しが見られない電気自動車(EV)市場の需要獲得に向けて、最大50億米ドルを投資する計画だ。 - 高温動作を実現、新世代SiC MOSFETダイとパッケージング技術
Wolfspeed(旧Cree)は、世界最大規模のパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Europe 2022」(2022年5月10〜12日、ドイツ)に出展し、同社が開発する新世代(Gen 3+)車載用SiC(炭化ケイ素)MOSFETのダイおよび先端パッケージング技術と組み合わせたソリューションなどを紹介した。 - Wolfspeed、SiC技術開発でGMとサプライヤー契約を締結
Wolfspeedは、GM(General Motors)の電気自動車(EV)向けSiC(炭化ケイ素)パワーデバイスの開発および提供に向けて同社と戦略的サプライヤー契約を締結した。 - 電気自動車への移行を後押しするSiC技術
Wolfspeed(旧Cree)は2021年10月、同社の社名変更と同時に、大規模なデザインウィンを獲得したことを発表した。同社は、電気自動車(EV)向けSiC(炭化ケイ素)半導体の開発および生産に関して、GM(General Motors)とサプライチェーン契約を結んだ。2021年8月には、STMicroelectronics(ST)との複数年契約を拡大し、150mmのベアおよびエピタキシャルSiCウエハーの供給に関する8億米ドルの契約を結んでいる。 - SiCはウエハー品質が課題、GaNは統合がトレンドに
パワーエレクトロニクスは、GaN(窒化ガリウム)とSiC(炭化ケイ素)の採用によって、興味深い道を歩んできた。フランスの市場調査会社であるYole Developpement(以下、Yole)は、これらのワイドバンドギャップ材料の概観を発表した。 - SiCは自動車、GaNはスマホが普及をけん引
パワーエレクトロニクスでは、GaN(窒化ガリウム)やSiC(炭化ケイ素)などのワイドバンドギャップ(WBG)デバイスの採用が進んでいる。シリコンは依然として市場を独占しているが、GaNやSiCデバイスの登場によって、技術はより効率的な新しいソリューションに向かうと予想される。