近視/遠視でも鮮明な映像を、網膜直接投影型ARグラス:NTTエレが展示
NTTエレクトロニクスは、「第9回 ウェアラブル EXPO」(2023年1月25〜27日、東京ビッグサイト)に出展し、視力矯正なしで鮮明な映像を見ることができる網膜直接投影型スマートグラスを展示した。
NTTエレクトロニクスは、「第9回 ウェアラブル EXPO」(2023年1月25〜27日、東京ビッグサイト)に出展し、同社の可視光PLC(Planer Lightwave Circuit:平面光波回路)技術を適用した「網膜直接投影型スマートグラス」のプロトタイプを展示した。利用者が近視や遠視でも眼鏡やコンタクトレンズなどの視力矯正なしで鮮明な映像を見ることができる。
PLC型RGBカプラ採用で小型軽量化を実現
網膜直接投影型スマートグラスは、RGB光源から照射した光線をMEMSミラーに反射させ、さらに、リフレクティングミラーで反射した光の焦点を網膜で結ぶことで直接投影する方式の製品だ。展示されたプロトタイプは、NTTエレクトロニクスのPLC型RGBカプラチップを採用したTDKのフルカラーレーザー光源モジュール、QDレーザーのスマートグラスを使用している。
RGBの各色のレーザー素子から出た光を、平面上の導波路を通して一つに合わせて照射するNTTエレクトロニクスのPLC型RGBカプラは、縦3mm×横4mmと小型で、チップ内透過率が1dB以下と低損失な点などが特長だ。
一般的なスマートグラスは、映像を表示する際、RGBの各色のレーザー素子からの光をレンズとミラーで反射させ、一つの光線として照射する「空間光学モジュール」を用いることから、使用する部品の点数が多く、サイズが大きくなるという課題があるが、今回展示していたプロトタイプは、フルカラーレーザー光源モジュールに、PLC型RGBカプラを採用したことで、体積と重量を従来比で10分の1に抑えることに成功しているという。
筆者も体験、目の前に浮かんだ利点と改良の余地
展示会では筆者もプロトタイプを体験した。
スマートグラスを装着し起動すると、有色透明な映像が目の前に浮かびあがった。プロトタイプは片目用で作られていたこともあり、装着直後は左右で見えている映像が違い、違和感があったが、程なくして慣れることができた。映像の解像度は、情報を認識するには十分な精度だと思われる。また、既存のレンズ投影型スマートグラスと異なり、映像に縁がないのは個人的にうれしい。一方で、既存のスマートグラスよりも重く、大きいため、デザイン性や着け心地の面では改良の余地がありそうだ。
担当者は、「(網膜直接投影型スマートグラスの)プロトタイプは、大きさと価格面に課題があり、まだ既存のスマートグラスに対して優位性を発揮できるレベルではない。研究開発は2028年ごろまで続くと思うが、2024年には小型かつ価格を抑えた第一段階の製品を開発し、2025年には販売を開始することが直近の目標だ」と述べた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 睡眠改善用ウェアラブル機器が続々登場
「ウェアラブル EXPO」(2023年1月25日〜27日、東京ビッグサイト)では、脳波やいびきを自宅で計測できる睡眠改善用のウェアラブルデバイスが多数展示された。 - スマートウォッチが備えるヘルスケア機能
今回は第2章第3節第1項(2.3.1)「ヘルスケアデバイス」の概要をご報告する。 - ヘルニア歴8年の記者が「近距離モビリティ」を体験してみた
WHILLは2022年11月9日、近距離モビリティ「WHILL」をはじめとした小型パーソナルモビリティ業界のメディア向け説明会を実施した。WHILLは道路交通法上「電動車椅子」の規格に分類され歩道走行が可能だ。運転免許も不要なため、普通自動車運転免許を返納した方や歩きづらさを感じている方の近距離移動用モビリティとして提供を進めている。今後は商業施設などでの貸し出しを通じて認知を拡大し、ゆくゆくは所有者増につなげていく狙いだ。 - 洗えるコネクターや角までタッチできるパネル、JAEが展示
日本航空電子工業(JAE)は「CEATEC 2022」(2022年10月18〜21日、幕張メッセ)で、同社が顧客との共創を目指す重点領域での新製品や注目製品などを展示した。本稿では、そのうちの幾つかを紹介する。 - 指先に乗るレーザーモジュールで“真の”ARグラスを実現
TDKは、同社が開発中の小型フルカラーレーザーモジュール(FCLM:Full Color Laser Module)を搭載したAR(拡張現実)グラスを、2022年10月18〜21日に開催される「CEATEC 2022」(幕張メッセ)にて出展する。