価格低迷の中、1β DRAMの拡充進めるMicron:2023年以降、広範なDRAM製品に適用予定
Micron Technologyは、近年、最先端DRAM技術の発展をリードしてきたメーカーの1社だ。同社の1β(ベータ)ノードのDRAM技術もその流れを維持するものだが、2023年にはDRAM価格の下落が予測される中、他の大手メーカーも、追い上げてきている。
Micron Technology(以下、Micron)は、近年、最先端DRAM技術の発展をリードしてきたメーカーの1社だ。同社の1β(ベータ)ノードのDRAM技術もその流れを維持するものだが、2023年にはDRAM価格の下落が予測される中、他の大手メーカーも、追い上げてきている。
Micronは2022年11月初めに、同社の1β DRAMの量産および、特定のスマートフォンメーカーへの認定サンプル出荷を開始したことを発表した。最先端のDRAM技術ノードはまず、データ転送速度8.5Gビット/秒を実現する同社製LPDDR5Xモバイルメモリに適用される。これは、2021年に量産が開始された同社の1α(アルファ)nm世代を適用したDRAMの後継になるという。
Micronの1β LPDDR5Xは、1ダイ当たりの容量が16Gビットで、前世代品と比べてメモリ密度は35%、電力効率は15%向上している。MicronのDRAMプロセスインテグレーション部門担当バイスプレジデントを務めるThy Tran氏は、「この最新ノードは、2世代のHKMG(High-k/Metal Gate)技術適用を含め、メモリセルアレイの縮小ができるよう、Micronのメモリセル統合を進める新しいプロセスや材料、装置などによって実現した成果だ。これによってメモリセルアレイのサイズだけでなく、ダイ上の他の回路なども積極的に縮小し、省スペース化を実現できる」と述べている。
Micronの1β DRAMをベースとするLPDDR5は、例えばカメラの起動や、ナイトモード、ポートレートモード、手ブレ補正、高解像度8Kビデオ録画、ビデオ編集などスマホの各種機能に向け、さまざまなメリットを提供する。その他にも、JEDECの新しい仕様である動的電圧・周波数スケーリング拡張コア(eDVFSC)技術の実装により、さらなるエネルギー高効率化を実現する。従来の倍増となる最大3200Mビット/秒までサポートする周波数ティアであるeDVFSCを追加することにより、省電力制御機能をさらに向上させ、エンドユーザーの使用パターンに応じた効率的な電源使用を実現できるようになった。
Tran氏は、「これらの機能は、スマホカメラの高速化を実現するだけでなく、AI(人工知能)/ML(機械学習)によってスマホを『モバイル編集スタジオ』に変化させるための方法を提示する。写真やビデオ、音声処理など何であれ、実現可能なあらゆるものの中心となっているのがメモリだ」と述べる。
HBM含むメモリ市場の全セグメントで、製品ポートフォリオを拡充
Objective AnalysisのプリンシパルアナリストであるJim Handy氏は、「Micronの1βについて注目すべきは、『Micronは、必要とされる高速化を実現可能なDRAMを開発する上で、同社のHKMG技術を適用して技術推進を目指している』ことが示されている点だ。これは、複雑なプロセスへと進んで行くだろう。もしMicronが、単に可能な限り安価に抑えることだけを考えていたなら、HKMGには手を付けなかったのではないか」と指摘する。
Handy氏は、「現在DDR5 DRAMは、主にPCに搭載され、データセンターにはあまり搭載されていない。Micronは、価格が暴落する前にDDR5を販売できるよう、早急にこの状況を変えたいと考えているようだ。特にDDR4が発売されてから8年が経過していることを考えると、なおさらだ。最近のMicronの焦点は、市場シェアを独占することよりも、より収益性を高めることになっている」と指摘した。
Micronは、1β DRAM技術をまずはLPDDR5に適用したが、2023年以降、HBM(High Bandwidth Memory)を含むメモリ市場の全セグメントで、製品ポートフォリオを拡充していく予定だ。
一方、Samsung Electronicsは2022年12月、業界初となる12nmプロセス技術を用いた16Gb(ギガビット)のDDR5 DRAMを開発したことを発表した。同社はMicronと同様、性能向上と電力効率を両立させていて、同製品は消費電力を従来比で最大23%改善しているという。量産開始は2023年を予定している。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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