共通API構想「GSMA Open Gateway」が始動:業界幹部が語るモバイル業界の新戦略(2/2 ページ)
世最大級のモバイル技術展示会「Mobile World Congress 2023(MWC23)」において、GSMA事務局長のMats Granryd氏らがオープンインフラストラクチャ、API、グローバルネットワークをつなぐための新たな方法に基づくモバイル業界の新戦略の概要を説明した。
「地球とクラウドの長所を融合させる」
GSMA Open Gatewayが発表された後、TelefonicaのCEOで、GSMAのチェアマンも務めるAlvarez-Pallete氏は、グローバルコネクティビティの利点を概説した。また、業界とステークホルダー間の協業を増やすことによって、世界ワイヤレス市場はどのように新たな世界に入れるのか、その仕組みについても説明した。同氏はそうした世界を「Earth Computing」と称した。
Alvarez-Pallete氏は「地球とクラウドの長所を融合させる時がきた。今こそ、通信業者、大手技術企業、デジタル関連のプレイヤーが協業し、全員にとって機会のあるデジタルの未来を創造する時だ。これは、昔起こったのと同じような素晴らしい取り組みとなる」と述べた。
さらに同氏は、「1987年、GSMAは世界を変えた。現在、GSMAには1100を超えるメンバーがいる。680社以上の事業者が音声、データ、ローミングサービスで55億の人々を接続している。そのような変化を、もう一度起こす時が来た。自分たちが何者かを思い出せば、それを成し遂げられるだろう。われわれは、モビリティとコンピューティングを取り込めるようにコネクティビティを根本的に変え、コネクティビティをシンプルかつ普遍的なものにし、非常に複雑だったことを、顧客や開発者のために容易にした。これがOpen Gatewayを支える野心だ。ネットワーク機能を公開するための共通レイヤーを創出し、地球とクラウドを結び付けるのだ」と続けた。
Web3への道を開くための重要なステップ
Alvarez-Pallete氏は、モバイルオペレーションとクラウドサービスの間にある格差をなくすという、同イニシアチブの重要な役割を高く評価し、Web3など次世代のコンセプトへの道を開くための重要なステップとなると強調した。
さらに同氏は「GSMA Open Gatewayは、超広帯域ネットワークへのシングルアクセスポイントを実現し、没入技術やWeb3の“触媒”となることで、それら技術の潜在能力を十分に発揮し、クリティカルマス(製品の普及が爆発的に跳ね上がる分岐点)に到達できるようにする」と述べた。
「通信事業者は、あらゆる人とモノをつなげるためのグローバルプラットフォームを開発する中で大きな進歩を遂げてきた。そして今、オープンネットワークAPIを統合し、相互運用性というローミングコンセプトを適用することで、モバイル事業者とクラウドサービスは真に統合し、新たな機会の世界を実現できる。通信事業者とクラウドプロバイダーの協業は、この新しいデジタルエコシステムにおいて不可欠である。GSMAがその役割を果たさなければ、世界は今とは違っていたはずだ。われわれは、もう一度その役割を果たす準備ができている」(Alvarez-Pallete氏)
通信事業者を取り巻く矛盾した状況
次に、OrangeのCEOであるHeydemann氏が登壇し、通信事業者が世界的なコネクテッドエコノミーにおいて抱える課題について説明した。同氏は特に欧州の事業者が直面する課題について主張した。
Heydemann氏は「過去10年で、欧州の通信事業者を取り巻く状況は完全に矛盾したものになった。われわれの分野は相反する要件を扱っている。コンサルティング会社のPwCによると、通信事業者のCEOのうち46%は次の10年を切り抜けられないだろうと考えている」と述べた。
同氏は、通信サービスプロバイダーが最高の接続性と高速なネットワークを提供するために膨大な投資が必要な一方、消費者に対して非常に競争力のある価格を提供し、同時にインターネット企業やコンテンツプロバイダーがその恩恵を享受できるようにする必要があるという状況を強調していた。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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