2023年に初の5G IoT対応衛星打ち上げへ、スペイン新興企業:2025年にはリアルタイム通信を可能に
スペイン・バルセロナに拠点を置く新興企業Sateliotは2023年2月、5G IoT対応衛星の打ち上げを予定している。同社は5G IoT衛星コンステレーションを提供する業界初の衛星オペレーターとしての地位を確立していきたい考えだ。
スペイン・バルセロナに拠点を置く新興企業Sateliotは2023年、業界初となる5G(第5世代移動通信) によるIoT(モノのインターネット)データ通信に対応する衛星を打ち上げる予定だという。
25年までに250基の小型衛星を打ち上げ
移動体通信の標準化団体「3GPP(3rd Generation Partnership Project)」の5G仕様である「Release 17」が完了したことを受け、現在さまざまなメーカーが、このRelease 17に追加された非地上系ネットワーク(NTN:Non Terrestrial Network)の要素を適用し、業界初となる5G IoT衛星の開発に取り組んでいるところだ。
Sateliotは、5G IoT衛星コンステレーションを提供する業界初の衛星オペレーターとしての地位を確立していきたい考えだ。Elon Musk氏がCEO(最高経営責任者)を務めるSpaceXは2023年2月に、業界で初めてSateliotの小型衛星を打ち上げる予定だという。Sateliotはこの他にも、同年末までに4基の衛星の打ち上げを予定しており、さらにその数は2025年末までに、250基に達する見込みだとしている。
SateliotのCEOであるJaume Sanpera氏は、米国EE Timesのインタビューに応じ、「われわれはこれまで、IoT小型衛星の開発に4年間を費やしてきた。また3GPPとの協業によって5G NTN仕様に関する取り組みも進め、多くの貢献をしてきた」と述べている。
Sateliotの低軌道(LEO)衛星は、5G NB(ナローバンド)-IoTを使用して、同社の衛星と地上のIoTデバイスとを接続する予定だという。NB-IoT仕様は、もともと4G(第4世代移動通信)標準規格だったが、2020年7月に国際電気通信連合(ITU)の5G仕様「IMT-2020」の一部として認められた。
宇宙空間の衛星と地上のIoTデバイスとを接続するためには、ただ単に5G対応衛星を軌道に置く以上のことが必要だ。また半導体メーカー各社も、最新の5G仕様をサポート可能な半導体をリリースする必要がある。
衛星準拠の5G IoTデバイスは23年末に登場
Sanpera氏は、「2023年半ばまでには、大手メーカーの大半が自社製チップレットにRelease 17を実装するとみられる。これはつまり、衛星準拠の5G IoTデバイスが2023年末までに市場に登場し、2024年には実用化される見込みであるということだ」と述べる。
Sateliotは現在、世界各国のモバイルネットワークオペレーター(MNO)に対して同社サービスの導入を推進しているところだ。同社は既に、大手MNOであるTelefónicaとの間で契約を結んでおり、現在世界15カ国でサービスが展開されているという。Sanpera氏は、「この他にも、54社のMNOとの間で話を進めているところだ」と述べる。
調査会社Disruptive Analysisの創設者であるDean Bubley氏は、「主に4G LTE技術をベースとしている衛星IoTは既に、石油/ガスインフラ遠隔監視システムや、農業用センサー、輸送コンテナなどをサポートしている他、建設機器のようなハイエンド資産を追跡することもできる」と指摘する。
Bubley氏は、「LEO衛星から地上のデバイスに5G NB-IoT接続を実行できるようになる可能性がある」と述べる。これはまさに、Sateliotが取り組んでいる内容だ。Sanpera氏は、「同様の5G衛星システムの実現に取り組んでいるスタートアップが他に4、5社ある」と述べたが、具体的な企業名は挙げなかった。
Sanpera氏は、IoTデバイスが1日1回メッセージを送信できるような衛星サービスの提供を見込んでいる。同氏は、顧客が望むIoTデバイスと衛星との通信について、3分の1が1日1回の通信、もう3分の1が1時間に1回の通信、そして残りの3分の1がほぼリアルタイムの通信を必要としていると見込む。
Sateliotは、2023年初頭に、1日1回のメッセージを送るIoTデバイスに対応する衛星コンステレーションを整備、2024年には通信を1時間に1回に強化し、2025年にはほぼリアルタイムの通信へと移行する予定だ。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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