エッジAIで注目の新興企業、事業縮小も資金調達に成功:元CEOは離脱
エッジAI向けチップを手掛ける米スタートアップのMythicが、1300万米ドルの資金調達に成功した。ただし同社は事業の再編縮小も実施している。
AI(人工知能)チップ関連の新興企業であるMythicは、当時同社のエンジニアリング担当バイスプレジデントだったTy Garibay氏がLinkedInに「投資家と共に滑走路から逸脱した」と投稿した後、2022年11月に抜本的な事業の再編縮小を実施した。同社は今回、既存ならびに新たな投資家から1300万米ドルの資金を調達したと発表した。共同設立者で以前はCTO(最高技術責任者)を務めていたDave Fick氏がCEO(最高経営責任者)に就任した。また、Mythicが2023年3月10日(米国時間)にメディアに伝えたところによると、元CEOのMike Henry氏は同社を離れたという。
アナログCiM技術を活用
Mythicの技術は、フラッシュメモリアレイを用いたアナログCiM(Comupter-in-Memory)技術をベースとしている。コンセプトとしては、アナログコンピューティングスキームの中でフラッシュメモリを可変抵抗器として用いるというものだ。それには、トランジスタを(8ビットの計算に対し)265のサブスレッショルドレベルで駆動させる必要がある。それに伴い、大幅なキャリブレーションと補償スキームが必要になるが、その領域にMythicの“秘伝の技術”の大部分が使われている。アナログコンピュータが高い注目を集めている背景には、エッジにおける推論の行列乗算に向けて非常に低電力で高速の計算を実現できることがある。
Mythicは以前、「M1108」と「M1076」という2つの製品を発表した。M1076は25TOPS(INT8)のエッジチップで、3Wという電力エンベロープを備えており、動画分析に向けて開発された。YOLOv5でのレイテンシは33ミリ秒だった。製品発表時に同社が米国EE Timesに語ったところによると、M1076はビデオ監視、産業用マシンビジョン、ドローン、AR/VR(拡張現実/仮想現実)アプリケーションといった領域で弾みがついているとのことだった。
MythicのCEOであるDave Fick氏は、同社のリリースで「M1076の需要は堅調で、当社の次世代プロセッサがスマートロボット、セキュリティカメラ、ドローン、ARヘッドセットといったコンピュータビジョンのアプリケーションに幅広く採用されることを確信している。アナログコンピューティングの潜在力はまさしく無限である」と語った。また、Mythicは2023年3月、M1076がLockheed Martinを含む顧客に出荷されたことにも言及した。
Lockheed Martin Venturesのバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーのChris Moran氏は、「当社は、高度なコンピューティング能力への投資を惜しまない。地政学的緊張が引き続き高まる中、当社は顧客と連携し続けながら、顧客のニーズを特定しなければならない。米国とその同盟国が最前線でそうした驚異に対峙し続けていけるように、技術をスケーリングできる企業を支援することも不可欠である」と述べた。
Fick氏によれば、Mythicは次世代製品として「M2000」を投入する計画だという。詳細はまだ明らかにされていないが、M2000はMythicの初代製品の技術をベースにしていて、2024年にも生産を開始する見込みだ。
Mythicは2012年に米ミシガン大学からスピンアウトして設立された。前回の投資ラウンドでは1億6520万米ドルを調達している。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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