Intel 18AでArmベースSoCを製造可能に、両社が協業:最先端SoC設計の複数世代契約
Intel Foundry ServicesとArmは2023年4月、Armの顧客が、Intel 18Aプロセス技術で低消費電力SoC(System on Chip)を開発できるようにする複数世代契約を締結したと発表した。
Intelのファウンドリー部門であるIntel Foundry Services(以下、IFS)とArmは2023年4月13日(米国時間)、Armの顧客が、Intel 18Aプロセス技術で低消費電力SoC(System on Chip)を開発できるようにする複数世代契約を締結したと発表した。
まずはモバイルSoC設計に重点
Intelは2021年、製造関連の戦略「IDM 2.0」を発表。その一環として、独立したファウンドリー事業であるIFSを立ち上げた。また、開始製造プロセスノードの名称も刷新し、5年間で5つのプロセスノードを実現するというロードマップを掲げている。現在量産されているのは「Intel 7」で、以降、「Intel 4」「Intel 3」、さらに、”オングストローム世代”とする「Intel 20A」「Intel 18A」と続く。2024年前半に製造開始予定のIntel 20Aでは、Intelが「RibbonFET」と呼ぶGAA(Gate All Around)を導入するとともに、ウエハー裏面に電源配線を設ける「PowerVia」を初めて実装する。Intel 18AはこのIntel 20Aの改良版として、2024年後半の製造開始を予定している。
両社は今回の協業によって、「ArmコアとIntelのオングストローム世代プロセスの技術進化を組み合わせることで、チップ設計者を支援する強力なコラボレーションを実現する」としている。なお、今回の協業は、当初はモバイルSoC設計に重点を置き、将来的には車載やIoT(モノのインターネット)、データセンター、航空宇宙、官公庁など各種用途への設計拡張も視野に入れているという。両社は、「次世代モバイルSoCを設計するArmの顧客は、Intel 18Aを活用し、最新の画期的なトランジスタ技術によって消費電力とパフォーマンスを改善しつつ、米国とEUの施設を含むIFSの強固な製造拠点を活用できる」と説明している。
設計技術共同最適化/システム技術共同最適化を実施
IFSとArmは、チップ設計とプロセス技術を最適化する設計技術共同最適化(DTCO)を実施し、Intel 18Aを対象とするArmコアのPPAC(消費電力、パフォーマンス、実装面積、コスト)を向上させていく。さらに、システム技術共同最適化(STCO)によって、アプリケーション、ソフトウェア、パッケージ、シリコンの各分野でプラットフォームの最適化を共同で行い、Intel独自のオープンなシステムファウンドリーモデルを活用していくとしている。
Intelは、IDM 2.0戦略の一環として、米国やEUなどで最先端製造施設の新設や拡張も進めている。両社は、「コラボレーションにより、ArmベースCPUコアのモバイルSoC設計に従事するファウンドリー顧客にとっては、よりバランスの取れたグローバルなサプライチェーンが実現する」と述べている。
IntelのCEO(最高経営責任者)を務めるPat Gelsinger氏は、「あらゆる機能のデジタル化に伴い、コンピューティングパワーに対する需要が高まる一方、これまでファブレス企業の顧客にとって、最先端モバイル技術に関する設計の選択肢は限定的だった。IntelとArmのコラボレーションでは、IFSの市場機会を拡大しつつ、クラス最高のCPU IP(Intellectual Property)とオープンなシステムファウンドリーの活用を望む全てのファブレス企業に、最先端プロセス技術に基づく新たな選択肢とアプローチを広く提供していく」とコメントしている。
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