ASMLの受注残は389億ユーロ――生産上回る需要続く:23年1〜3月は91%の増収
ASMLは2023年第1四半期(1〜3月期)の業績を発表した。売上高は67億4600万ユーロで粗利益率は50.6%だった。一部の顧客で受け入れ時期の調整はあるものの、需要は依然として生産能力を上回るとした。
ASMLは2023年4月19日(オランダ時間)、同年第1四半期(1〜3月期)の業績を発表した。それによると、売上高は67億4600万ユーロで、前年同期(35億3400万ユーロ)比で90.8%増加した。売上総利益は34億1300万ユーロ。粗利益率は50.6%で、営業利益率は32.7%だった。
売上高のうち、53億4200万ユーロはシステムの売上高である。そのうちEUV(極端紫外線)リソグラフィ装置は54%と半分以上を占める。具体的には17台を出荷した。出荷先の地域別比率を見ると、台湾が49%と最大で、韓国が26%、米国が15%、中国が8%と続く。日本は1%だった。
ASMLのCEO(最高経営責任者)を務めるPeter Wennink氏はリリースで「迅速なシステム導入と早期受け取りにより、EUVおよびDUV(深紫外線)の両方のリソグラフィ装置で、売上高が予想を上回った」と述べている。
さらに、「一部の主要顧客による需要調整は見られるが、他の顧客による需要、とりわけ成熟したプロセスノードにおけるDUVリソグラフィ装置の需要が、その調整を吸収している。全体的な需要は依然として、当社のことしの生産能力を上回っており、現在、389億ユーロを超える受注残を抱えている。引き続き、システムの生産能力の最大化に努める」と続けた。
ASMLは2023年第2四半期の業績について、売上高は65億〜70億ユーロ(サービスの売上高予測である13億ユーロを含む)、粗利益率は50〜51%になると予測している。
なおASMLのCFO(最高財務責任者)を務めるRoger Dassen氏は決算説明会において、「2023年通期の見通しは基本的に変わらない。2023年は、EUVシステムは約60台、DUVシステムは約375台を出荷する予定で、この見通しを維持している。EUV事業では前年比40%増、EUV以外の事業では同30%増、システム導入後のサービス関連事業では同5%増の成長を見込んでいる」と語った。
オランダ政府の輸出規制についても言及
オランダ政府は2023年3月、先端の半導体製造装置の輸出を規制すると発表した。これについてDassen氏は「現在、オランダ当局からの詳細なガイダンスを待っているところだ」とコメント。「だがこの規制は、極めて高度な半導体製造に向けたものだ。われわれは、先進的な液浸リソグラフィ装置の輸出についてはライセンスが必要になると見ている。具体的には、当社のDUVシステム『NXT:2000』や、それ以降のバージョンの装置で、そうしたライセンスが必要になるのではないか」と続けた。
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