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ロームがGaNパワー半導体で急加速、SiCに続く軸にPCIM Europe 2023(1/2 ページ)

ロームが、GaNパワー半導体の展開を急加速している。同社は、パワーエレクトロニクスの国際展示会「PCIM Europe 2023」においてGaN製品を大きくアピールし、SiCを含めたWBG(ワイドバンドギャップ)市場での拡大に向けた意欲を示していた。

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 ロームが、GaN(窒化ガリウム)パワー半導体の展開を急加速している。同社は2022年、GaNデバイス製品の第1弾として、150V耐圧のGaN HEMTの量産を開始。2023年に入ると3月にはGaNデバイス向け高速駆動制御IC技術の確立を、4月には650V耐圧品の量産開始を相次いで発表した。さらに、GaNデバイスとLSIをワンパッケージに収めたSiP(System in Package)も6月ごろに量産開始する予定であるうえ、今後1年以内に複数製品のリリースを計画しているという。

 同社はドイツ・ニュルンベルクで開催されたパワーエレクトロニクスの国際展示会「PCIM Europe 2023」でもGaN製品を大きくアピールし、SiC(炭化ケイ素)含めたWBG(ワイドバンドギャップ)市場での拡大に向けた意欲を示していた。

「LSIとデバイスの融合」を強みに

 2010年に世界初のSiC MOSFET量産を始めるなど、SiCパワー半導体分野で先駆的な開発を進めてきたロームだが、GaNパワー半導体についても、20年以上にわたり研究/開発を進めてきたという。同社はGaNデバイス製品について、その特性からアプリケーションの省エネ/小型化に寄与する「EcoGaN(エコガン)」と名付けていて、ACアダプターやデータセンター、オンボードチャージャー、ロボットなどをターゲットに現在ラインアップを拡充。今後、SiCとの両輪でWBGパワー半導体市場での存在感を高めていく方針だ。

 GaNデバイス自体の性能追求と合わせて同社が重視するのが、デバイス、LSI、磁性材料それぞれの技術の連携だ。同社LSI事業本部パワーステージ商品開発部部長、山口雄平氏は、「GaNの性能を最大限発揮するには、これらが三位一体とならなければならない。われわれは特にLSIのテクノロジーとデバイスの融合によって強いモノづくりを行っていこうと考えている」と説明。同社は耐圧150V、650VのGaNデバイスに加え、ゲートドライバー、DC-DCコントローラーなどの各制御ICについても開発を加速。さらに今後、両者を組み合わせたモジュールおよび、650V耐圧品についてはLSIと組み合わせたSiPとしての提供も進め、デバイスの性能を最大限に生かしつつ扱いやすい製品として、同社の強みを生かした形で差異化を図っていく。

GaNデバイスと制御ICを続々と投入

 具体的な展開としては、同社は2022年3月、EcoGaNの第1弾製品である150V耐圧のGaN HEMT「GNE10xxTBシリーズ」の量産体制を確立したと発表した。同シリーズは、独自のデバイス構造採用によって、200V耐圧以下のGaNデバイスでは6Vが一般的だったゲート耐圧を8Vにまで高めた「使いやすさ」が大きな特長。この結果、デバイス動作時の電圧マージンが広がり、スイッチング時に6Vを超えるオーバーシュート電圧が発生しても、デバイスの劣化はないという。また、このゲート耐圧拡大や低インダクタンスのパッケージ採用などによって、1MHzの高周波帯において96.5%以上の電源効率も達成している。

150V耐圧GaN HEMT「GNE1040TB」やGaN HEMT用高速ゲートドライバーIC「BD2311NVX-C」を搭載したLiDARセンサー向けのリファレンスデザイン[クリックで拡大]
150V耐圧GaN HEMT「GNE1040TB」やGaN HEMT用高速ゲートドライバーIC「BD2311NVX-C」を搭載したLiDARセンサー向けのリファレンスデザイン[クリックで拡大]

 ロームは、最小入力パルス幅1.25ナノ秒のGaN HEMT用高速ゲートドライバーIC「BD2311NVX-C」も開発中で(サンプルは既に提供中)、GaNデバイスとの組み合わせることでその高速スイッチング性能を引き出し、LiDARセンサーの高解像度化といったメリットを実現できるとしている。GNE10xxTBシリーズ、BD2311NVX-Cおよびレーザーダイオードなどを搭載した、LiDARセンサー向けのリファレンスデザインの設計情報は既に公開している。また、GaN向けのゲートドライバーについては、ハーフブリッジドライバーも開発中のほか、2025年度ごろには絶縁型ゲートドライバーも計画している。

 同社は2023年3月、GaNデバイスの性能を最大限引き出す「超高速駆動制御」IC技術を確立したとも発表している。同技術は、同社の超高速パルス制御技術「Nano Pulse Control」を進化させたもので、独自の回路構成により制御ICの最小制御パルス幅を、業界最高レベルの2ナノ秒まで向上する。同社はこの技術を用いた100V入力1ch DC-DCコントローラーICのサンプル出荷を2023年後半に予定。GaNデバイスと組み合わせることで、一般的な電源回路に比べ実装面積を86%も削減できるとしている。

ロームのEcoGaNおよび超高速駆動制御IC技術を用いたDC-DCコントローラーの組み合わせによる実装面積削減の例[クリックで拡大]
ロームのEcoGaNおよび超高速駆動制御IC技術を用いたDC-DCコントローラーの組み合わせによる実装面積削減の例[クリックで拡大]

 ロームは150V耐圧品のラインアップ拡充および、GaNデバイスの性能を生かす各制御ICについて今後続々とリリースしていく予定(下図)で、さらにそれらを組み合わせたモジュールについても2024年度ごろから展開し、市場での拡大を図っていく方針だ。

150V耐圧のディスクリート品のロードマップ。2025年度ごろには第2世代品が登場、2027年度ごろには車載グレード品も投入していく予定だ。各制御ICもここから1年で続々と投入予定だ。 左=150V耐圧のディスクリート品のロードマップ。2025年度ごろには第2世代品が登場、2027年度ごろには車載グレード品も投入していく予定だ/右=制御ICのロードマップ[クリックで拡大] 出所:ローム

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