人の動作をまねるロボット、ニューロモーフィックを搭載:スイスSynSenseがチップを開発(2/2 ページ)
スイスの新興企業SynSenseは、同社のニューロモーフィックプロセッサを搭載したトイロボットを披露した。SynSenseの技術と戦略を聞いた。
スパイキングニューラルネットワーク向けアクセラレーターも開発
SynSenseは、オーディオや生体信号、振動、加速度センサーのような時系列データ向けに、スパイキングニューラルネットワーク用アクセラレーター「Xylo」の開発にも取り組んでいる。Xyloは、先行品であるDynap-CNNコアとは異なるアーキテクチャで、既に数回のテープアウトを経ている。第1弾のXylo開発キットはオーディオに焦点を当てており、数百マイクロワット以内でキーワードスポッティングを実行し、レイテンシは200ミリ秒未満である。
Muir氏は、「Xyloファミリーは、共通のプロセッサアーキテクチャに加えて、非常に効率的な感覚インタフェースを多数搭載する。オーディオは既に開発済みで、現在IMU(Inertial Measurement Unit)センサーインタフェースを開発中である。他のクラスのアプリケーションに向けたセンサーインタフェースも開発する予定だ」と述べている。
Xyloのアーキテクチャは、Dynap-CNNとは異なり、同期デジタルである。ニューロンモデルはより複雑で、設定可能な時間ダイナミクスを備えたリーキー積分発火ニューロンをシミュレートしている。コアは、スパイキングニューロンダイナミクスのデジタルシミュレーションを効果的に実行し、ニューロンが積分する時間の長さを指定できる。他のソリューションは、オーディオのスニペット(断片)をバッファリングし、それらを画像に変換して処理するが、Xyloはストリーミングされたオーディオデータで動作するため、レイテンシを低く抑えることができる。
SynSenseのオープンソースソフトウェアツールチェーンは、これまでスパイキングネットワークを扱ったことがない人でも、同社のチップを簡単に扱えるように設計されているという。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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