AIチップ新興Hailo、新ビジョンプロセッサSoCを開発:IPカメラをターゲットに
AIチップのスタートアップHailoは、新型AIビジョンチップとして、AIアクセラレーターとCPU、DSPを備えたSoC(System on Chip)である「Hailo-15」シリーズを発表した。
イスラエルを拠点とするAI(人工知能)チップのスタートアップHailoは、既存のAIチップ「Hailo-8」とは異なるユースケース向けに設計した新型AIビジョンチップとして、「Hailo-15」シリーズ3品種を追加した。Hailo-8はこれまで、主に産業用エッジボックスやアグリゲーターなどのビジョンプロセッシング向けコプロセッサとして使われてきたが、Hailo-15シリーズは、AIアクセラレーターとCPU、DSPを備えたSoC(System on Chip)であり、IPカメラをターゲットとする。
Hailoは、新製品と並行して、Hailo-8も引き続き生産していく予定だという。
HailoのCEO(最高経営責任者)であるOrr Danon氏は、米国EE Timesの取材に応じ、「多くの顧客は、カメラやゲートウェイなどでAIを実行しており、理想としてはソフトウェア投資を他の製品に再利用したいと考えている。われわれが生み出した新しい製品ラインアップは、特にHailo-8と同じ技術スタックをベースとしたスマートカメラをターゲットとしている。この技術スタックは新たに改良されているが、さまざまな形式で導入できるよう、完全な互換性を確保している」と述べている。
Danon氏は、「顧客は一般的に、Hailo-8かHailo-15のいずれかを購入することになるが、例えば、エンドポイントでビジョンプロセッシングを行い、ゲートウェイで複数カメラからストリームを収集するなど、両方を使用する設定もある」と述べる。
ヘテロジニアスなコンピューティングを提供するSoC
Hailo-15シリーズは、オーケストレーションタスク用CPUや、柔軟性に優れながら、より特化した計算が可能なDSP、最も手間がかかるAI推論に対処可能なAIアクセラレーターによる、ヘテロジニアスなコンピューティングを提供する。
Danon氏は、「AIは、単なるニューラルネットワークではなく、畳み込みニューラルネットワークやトランスフォーマーなどの複数の側面を持つ。DSPは、CPUとAIアクセラレーターの間のギャップを埋められる効率的なツールだ。CPUとDSPはいずれも、サードパーティー企業からライセンス供与を受けており、RISC-Vベースではない」と付け加えた。
さらに同氏は、「Hailo-15は、Hailo-8と比べると処理能力は低い。一方、AIアクセラレーターアーキテクチャはHailo-8と似ているが、改善されている」と述べる。
「INT8性能は、『Hailo-15H』が20TOPS、『Hailo-15M』が11TOPS、『Hailo-15L』が7TOPSだ(Hailo-8は26TOPS)。電力消費量はワークロードに依存するが、顧客は現在のところ、2W未満で動作させている」(Danon氏)
こうした性能レベルは、同時に実行したいタスクの数や、必要な解像度、フレームレート、予測精度などにもよるが、複数センサーを搭載したスマートカメラに適しているといえる。
Danon氏は、「当社の顧客の中には、このような種類のデバイス上で20個以上のタスクを同時に実行している企業もある。これは膨大な処理量だが、もっと低い性能要件で、よりコンパクトかつコスト効率の高いソリューションを好む顧客企業もある」と述べる。
また、低照度性能、デジタルズームなど、画質を高めるためにAIを利用する顧客も多いという。これらの用途は、スマートフォンのカメラでは一般的だが、IPカメラではまだ一般的ではない。
Hailo-15シリーズのサンプル出荷は2023年半ばを予定しているという。また、Danon 氏は、「Hailo-15のアーキテクチャの詳細についても、2023後半に公開予定だ」と述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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