GF、米国防大手と半導体製造強化などで提携:国家安全保障の向上に向け
2023年6月12日、GlobalFoundriesと米国の防衛/航空宇宙大手Lockheed Martinが、米国の半導体製造とイノベーション進化および、国防システムの米国内サプライチェーンの安全性、信頼性、回復力向上に向け戦略的パートナーシップを締結すると発表した。
2023年6月12日(米国時間)、GlobalFoundries(GF)と米国の防衛/航空宇宙大手Lockheed Martinは、米国の半導体製造とイノベーションを進化させるため、また国防システムの米国内サプライチェーンの安全性、信頼性、回復力を高めるために戦略的パートナーシップを締結すると発表した。
Lockheed Martinは、この連携により同社が、「米国の優位性と国防力を高める安全なソリューションを、より素早く安価に生み出せるようになる」とコメントしている。
2023年初旬、EE Timesは、米国の軍用チップの供給が危険なほどに低いことを伝えた。同記事は、ロシアとウクライナの戦争、商用チップバイヤーとの競争、アジアの半導体サプライヤーへの過剰な依存によって、次の10年で台湾が絡む戦争が勃発した場合、米国の国防総省が効果的に対応することは難しくなる可能性があることを明らかにするものだった。
米軍向け半導体、高まる国内製造の必要性
2023年6月12日、米国上院多数党院内総務のCharles Schumer氏は、Lockheed MartinのCEO(最高経営責任者)であるJim Taiclet氏、GFのCEOであるThomas Caulfield氏と共に、米国ニューヨーク州北部で2社間のパートナーシップについて発表した。
Schumer氏はこのパートナーシップについて、「大手2社が団結して(中略)、米国と米国の兵士たちを守る技術に用いられるチップがこの近郊地帯で作られるようにする。私はこうしたパートナーシップの火付け役となるようにCHIPS法を草案した(中略)。現在、われわれは、サプライチェーンを確保し、米国軍が頼りにするチップが海外ではなく米国内のこのような場所で製造できるようにする必要性に、かつてないほどに迫られている」と述べた。
GFとLockheed Martinは、共同事業において、「半導体イノベーションの重要なニーズと、幅広い分野の先進/次世代半導体技術の安全な製造」を追求していくという。今後の取り組みの例としては下記が挙げられる。
- より高温での動作を実現するGaN-on-Silicon技術
- 低消費電力かつ高速なデータ伝送を実現するシリコンフォトニクス
- 3D異種統合(ヘテロジニアスインテグレーション)によるチップパッケージの最適化、性能向上
また、両社は、チップをより迅速かつ安価に製造するためのチップレットエコシステムの構築にも共同で取り組むという。
GFが米国ニューヨーク州とバーモント州に置く製造施設は、米国政府から信頼性について認定を受けていて、「陸、空、海、宇宙にある米国で最も機密性の高いシステムで用いられる安全なチップ」を製造するという。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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