日欧が半導体に関する協力覚書を締結:サプライチェーン混乱回避に向け
西村康稔経済産業大臣は2023年7月4日、EUの執行機関、欧州委員会(EC)の委員(域内市場担当)であるThierry Breton氏と会談し、日欧の半導体分野での協力に関する覚書を締結した。
「早期警戒メカニズム」を整備へ
西村康稔経済産業大臣は2023年7月4日、EUの執行機関、欧州委員会(EC)の委員(域内市場担当)であるThierry Breton氏と会談し、日欧の半導体分野での協力に関する覚書を締結した。
日欧は、半導体サプライチェーン混乱の回避に向け、情報の迅速な共有を実現する枠組みとして「早期警戒メカニズム」を整備する予定だ。覚書では、「情報共有メカニズムおよび連絡先を確立することによって、早期警戒メカニズムを実現するための両組織間の特定の取り決めを策定するよう努める」としている。
PFAS代替品の研究開発に関する協力も
また、PFAS(パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)などフッ素系化学物質の代替品を中心に、半導体や次世代半導体の製造に不可欠な構成要素の研究開発に関する協力体制の確立にも取り組む予定だ。
さらに、研究開発協力を進めるにあたり、最良の資金提供の可能性を見いだすため、日欧で共同研究プログラムを実施する予定だ。両者は暫定的に、EU側では半導体共同事業(Chips Joint Undertaking)の支援を受け、日本側では日本の関連制度の下で、そうした協力を計画することを提案。また、研究開発協力のさらなる議題特定のため、定期的な会合も開く予定という。
半導体の研究開発協力は、大学、研究/技術組織、主要な産業界の関係者、その他の関連する利害関係者など、当事者双方それぞれの管轄における関連組織間の協力を促進することを目的としている。
このほか日欧は、半導体産業における高度人材の育成、最先端半導体のユースケース創出、半導体セクターへの補助金の透明性確保に向けた協力の強化を進める予定だ。
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