「性能を最大限引き出す」、ローム初のGaN SiP詳細:部品体積99%減、電力損失55%減(1/2 ページ)
ロームが、650V耐圧GaN HEMTとゲート駆動用ドライバーを1パッケージ化したパワーステージICを発表した。同社初のGaN SiPで、シリコンMOSFETから置き換えた場合、部品体積を約99%、電力損失を約55%削減できるという。
ロームは2023年7月20日、650V耐圧のGaN HEMTとゲート駆動用ドライバーを1パッケージに同梱したパワーステージICを開発したと発表した。データサーバなどの産業機器や白物家電、ACアダプターといった民生機器が搭載する一次電源向け。シリコン(Si)MOSFETから置き換えた場合、部品体積を約99%、電力損失を約55%削減するという。今回、「GaN HEMTの性能を最大限に引き出す」(同社)と同時に容易なGaN実装を実現するという同社初のGaN SiPについて、詳細を聞いた。
SiP化でGaNの性能最大限に引き出す
ロームは2022年3月に、GaNデバイス製品の第1弾として150V耐圧GaN HEMTの量産体制確立を発表して以降、GaNパワー半導体の展開を加速。2023年4月には650V耐圧のGaN HEMTの量産開始も発表した。同社は、650V耐圧GaN HEMTについて、LSIを同梱したSiP(System in Package)のラインアップ拡充も進めていく方針で、今回の新製品がその第1弾となる。
新製品開発の背景としてロームが挙げるのが、GaN HEMT単体の持つ課題だ。具体的には、GaN HEMT単体の場合、駆動電圧(Vth)が一般的に1.5〜1.8V程度と低いため、セルフターンオン(誤動作でデバイスがオン状態になること)のリスクがあるという点、そして、ゲート耐圧が一般的に6V程度と低くゲート破壊のリスクがあるという点の2つだ。この課題に対応するため、GaN HEMTはゲート駆動用ドライバーとセットで使うことが必須となる。しかし、従来のように別途ゲート駆動用ドライバーICを用いる場合、外付け部品点数の増加や、寄生インダクタンス/寄生容量を考慮する必要性といった、新たな課題が生じていた。ロームは今回、ゲート駆動用ドライバーとGaN HEMTを1パッケージに同梱することで、こうした課題に対応したとしている。
下図は新製品の概要で、650V耐圧GaN HEMTとゲート駆動用ドライバー、さらにEMI(電磁妨害)コントロール、LDO、温度保護、電源保護などの追加機能および周辺部品を1つのパッケージに同梱。GaN HEMTの性能を最大限に引き出すと同時に、GaN HEMT駆動調整が不要となることで容易な実装も実現するとしている。パッケージサイズは8.0×8.0×1.0mmと小型で、冷却フィンも不要となるため、Si MOSFETをから置き換える場合、部品体積を約99%削減できるという。説明担当者は、「ロームは各部門の距離が近く、いろいろな部門で話し合いながら製品開発ができる体制が強みだ。新製品はロームの有するアナログとパワーのテクノロジーのすり合わせによって実現した成果だ」と語っていた。
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