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スマホやPCは「中身のみ進化」する時代に突入この10年で起こったこと、次の10年で起こること(75)(1/4 ページ)

今回は、Appleの「Mac Pro」と「Mac Studio」や、ソニー、Samsung Electronicsのスマートフォンを分解。いずれも「外観は前世代品と同じ」で、中身を大きく変更していることが共通している。

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Intel、AMD、NVIDIA製品が見当たらない


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 Appleは2023年6月、ハイエンドコンピュータ2機種の発売を開始した。「Mac Pro」と「Mac Studio」である。ともに現時点でApple最上位のプロセッサ「M2 Ultra」を搭載し、前者はPCI Expressもサポートしている。

 Mac ProもMac Studioも前機種とほぼ同じ形状だが、Mac Proでは中身が大幅に入れ替わっている。Appleは2020年にMac向けプロセッサに自社開発の「Apple M1」を採用し、それまで長年Mac用プロセッサとして採用を続けてきたIntelプロセッサを置き換えた。以降、「Mac mini」「iMac」「iPad Pro」にもM1を採用し、“脱Intel”を加速させている。2023年版のMac ProにもAppleオリジナルのプロセッサM2 Ultraが採用されることになり、新規のApple製品には一切Intelが入っていない状況となっている。

 同様にAMDのGPUも非採用となった。つまりAppleは、Intel、AMD、NVIDIAという3大プロセッサメーカーの製品を一切使わずに、ハイエンドコンピュータを作り上げているわけだ。M1登場時から予想されていたとはいえ、あらためて驚嘆を覚えずにはいられない。

 一方で大きな成功には至っていないものの、MicrosoftもQualcommと共同開発したプロセッサ「Microsoft SQ」シリーズを採用し続けており、“脱3大プロセッサメーカー”を片輪で続けている(Microsoft は依然、Intelプロセッサがメインである)。

 図1は、2023年6月発売のM2 Ultra搭載Mac Studioの内部チップの様子である。Mac Studioは2022年3月に登場した新規のハイエンドデスクトップだ。図1は第2世代である。

図1:2023年6月発売のM2 Ultra搭載Mac Studioのチップ
図1:2023年6月発売のM2 Ultra搭載Mac Studioのチップ[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 内部は電源基板、プロセッサ基板、空冷ファンの3つの部品で構成されている。図1の右上がプロセッサ基板だ。プロセッサ基板には表裏にチップが配置されており、表面のほぼ中央にApple製のハイエンドプロセッサ 「M2 Max」が向き合って2個配置され、その上下に4個ずつ計8個のLPDDR5を用いたユニファイドメモリが近接配置されている。LPDDR5とプロセッサの距離は最短だ。プロセッサとLPDDR5はモジュール化されており、モジュールがメイン基板に設置されるようになっている。ユーザーが発注時にメモリ容量を選択できるようになっているので、メモリ容量に応じたモジュールがベース基板に設置され、出荷されていくわけだ。

 モジュール直下の裏面には電源を安定化させるためのキャパシターがびっしりと配置されている。シリコンキャパシターにはAppleのロゴが刻印されたチップが10個も並んでいる。またモジュールの四方にはAppleロゴ入りの電源ICが4個並ぶ。Thunderbolt 4.0のドライバーIC は6個ともApple製だ。

 さらにはSSDユニット内部にもApple製チップが多数使われている。SSDチップのパッケージ内にはそれぞれ1個ずつApple製のSSDコントローラーが埋め込まれている。またSSDボード上にはApple製の電源ICも搭載されている。

 Mac Studioの基板上には目に見えるだけでも、27個ものAppleチップが搭載されている!! プロセッサ下部にはシリコンキャパシター、シリコンインターポーザーなども埋め込まれているので(現在M2 Ultraを開封して確認中、機会あれば別途報告したい)、Apple製チップは恐らく60個を超えるものと思われる。

 デジタルチップはプロセッサの2個。残りのチップはアナログや高速インタフェースを持つSSDコントローラーと、システム特性を改善するためのシリコンとなっている。Appleはプロセッサ(デジタル)だけを自前化するメーカーではなく、システム全体の最適化のためのアナログやコントローラー、インタフェース、キャパシターまで網羅的にラインアップを備えている。3大プロセッサメーカーがFPGAや高速インタフェースを手掛けるメーカーを買収し、HPC(High Performance Computing)向けの半導体ラインアップを広げて面を形成しているように、Appleもシステムの面を広げている。プロセッサ(デジタル)だけあってもシステムは完結しないからだ。また優位性も作れない。

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