「日本は有利」、自動車と産機で事業拡大を狙うオンセミ:社長就任1年半後の林孝浩氏(2/3 ページ)
2022年3月にonsemiの日本法人社長に就任した林孝浩氏に、この1年半の変化や、onsemiの戦略について聞いた。
SiCの売上高「2023年に10億ドル」を目指す
――ちょうどSiCパワーデバイスのお話が出ましたが、近年は、SiCも含めパワーデバイスへの注力が目立つと感じます。
林氏 SiCおよびSiのパワーデバイスだけに限っていうと、当社の試算でonsemiのシェアは9%(2022年時)だ。今後の5年間でシェア拡大を狙う。売上高は、2022〜2027年にかけてCAGR38%で伸ばしていく。まずは2023年内に、SiCの売上高で10億米ドルに到達することを掲げており、順調にその目標をトレースしている。パワーデバイスの売上高におけるSiとSiCの比率は非公開だが、「2023年に10億米ドル到達を目指す」と公言できるところまでようやくきた、と考えていただきたい。
SiCのLTSA件数も順調に増え、2023年第1四半期末の時点で、LTSAの合計金額は90億米ドルに達している。
われわれは、2022〜2030年は、パワーデバイス、特にSiCパワーデバイスが半導体市場のけん引力になるとみている。この時期の半導体市場はCAGR33%と、これまでよりも高い成長率で伸びると予測している。
――onsemiはどのようにSiCの売上高を伸ばしていくのでしょうか。
林氏 「Supply」「Scale」「Scope」「Superior Technology」という4つの「S」で売上高を伸ばしていく。
「Supply」については、SiCの粉末からSiCパワーモジュールまで自社で手掛けている点が強みになるだろう。ここまで一気通貫で手掛けているSiCパワーデバイスのサプライヤーはかなり少ない。
「Scale」は高品質なSiC製品の継続的な量産を意味している。品質と量産を両立するのは難しいが、当社はここに長い歴史を持っている。SiCモジュールではこれまで累計5億個以上を出荷していて、十分に実績があるといえる。
「Scope」は、低耐圧品から高耐圧品まで、要望に応じて提供できるということで、「Superior Technology」は、SiCのダイにもモジュールにも対応できるので用途に合わせて最適化しやすいという利点を示している。
――onsemiは、SiC材料を手掛ける米GT Advanced Technologies(GTAT)を2021年に買収しました。その成果はいかがですか。
林氏 SiCウエハー基板の生産能力が、買収当時から10倍に向上した。ダイとパッケージの生産能力もそれぞれ12倍、4倍に向上している。
ウエハー基板の生産能力は、極めて重要な要素だ。ただ、SiCブールの生産には時間がかかるので、量産ではどうしてもボトルネックになる。そのため、ここに集中的に投資し、2022年8月には、米ニューハンプシャー州にあるSiCブールの生産施設の拡張を完了した。
ダイそのものの技術進化も進めている。現在は、第1世代と第2世代が売り上げの主流だが、2023年内にも第3世代をリリースする。第5世代までのロードマップがあり、それを目指して開発を進めているさなかだ。競合他社との性能比較については、同じチップサイズであれば、当社のSiCを採用したトラクションインバーターのFOM(Figure of Merit)が30%増になるくらいの差がある。
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