Apple M2 Ultraと「たまごっち ユニ」から見える、米中半導体の位置付け:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(76)(2/3 ページ)
今回は、Appleのモンスター級プロセッサ「M2 Ultra」と、バンダイの「Tamagotchi Uni(たまごっち ユニ)」を分解。そこから、米中の半導体メーカーが目指す戦略を読み解く。
「M2 Ultra」モジュールのメモリを分解
図3は、M2 Ultraモジュールに組み込まれるユニファイドメモリ(LPDDR5)の様子である。メモリはプロセッサを取り囲むように上下に4個ずつ配置され、トータルで8個のパッケージとなっている。
今回報告のものは最小サイズの64GB版。先述したように、最大では192GB版も存在するが、内部の構成が異なってくる。64GBは、図3のようにメモリパッケージのモールドを除去すると左右2つのLPDDR5が現れる。現在、多くのモバイルメモリは1個のシリコンで大容量を実現しているのではなく、横置きや縦積みなど複数のシリコンをパッケージ内で組み合わせる(同時に並列化も行う)ことで、より高速かつ、より大容量を実現している。
パッケージの端子部の写真はボカシを入れたが、Appleが活用するメモリは一般に市販されるDRAMのほぼ倍の端子を持っていて(ビット拡張がなされている)、内部のシリコン(メモリ専業メーカーによるもの)も一部がカスタム化されている。
図4は、M2 Ultra 64GB版のユニファイドメモリの内部を1個ずつのシリコンに分離した様子である。64GB版は8個のパッケージで構成されているので、1パッケージ当たり8GB。8GBのパッケージ内部には8個のシリコンが横2列、縦4段で配置されている。1シリコンは1GBのLPDDR5だ。最大サイズの192GB版では1パッケージに2GBのLPDDR5が横2列、縦6段となっている。
手のひらサイズのモジュールにシリコンが157個
AppleのM2 Ultraモジュールには、膨大な数のシリコン(機能、特性、メモリ)が横縦両方向に埋め込まれている。プロセッサシリコンが2基、シリコンインターポーザーが1個、シリコンキャパシターが58個、64GB版の場合は1GBのLPDDR5が64枚、192GB版の場合は2GBのLPDDR5が96枚。トータルでは最小構成で125個、最大構成では157個ものシリコンが、手のひらサイズのモジュールに組み込まれているのだ……!
HBMなどシリコン同士を組み合わせることで高機能化(メモリ帯域を上げる)を実現するものは増えているが、1つのパッケージ内に存在するシリコン数は、積層メモリまでカウントしても100以下というのが一般的である。実際には50以下だ。AppleのUltraシリーズがいかに高度なパッケージング技術なのかが、数字の上でも明らかになった。現在、半導体の進化は微細化と高度なパッケージ化の両面で進められているが、Appleはその両者を並行して、同時に行っているわけだ。
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