AIの潜在能力を引き出すシリコンフォトニクス:光インターコネクトへの期待(2/2 ページ)
AI(人工知能)の世界では、より高効率かつ高速でデータを処理すべく、シリコンフォトニクス技術に注目が集まっている。
AI分野を変えるシリコンフォトニクス
既存のシリコンフォトニクスや類似技術では、高まる製品需要に対し、性能やコストの面で効果的に対応することができない。
バックエンド製造の場合、パッシブベースのシリコンフォトニクスチップに外部接続したレーザーを使用する必要はなく、運営コストや資本支出を大幅に削減することが可能だ。シリコンの平方インチ当たりのチャンネル数を増やして、異なる種類の能動部品を組み合わせることにより、少ない消費電力でPIC当たりの帯域幅を大幅に増やすことができる。
シリコンフォトニクスは、短距離光インターコネクトを使用し、AIアプリケーションで比較的距離が短いデータ伝送を効率化することが可能だ。自然言語処理や画像認識、自動運転などのように、AIアプリケーションが使われる状況下では、大規模なデータセットがリアルタイムで処理/分析される。
リアルタイムの意思決定やシステム性能の最適化には、迅速かつ効率的なデータ伝送が不可欠だ。シリコンフォトニクスは、コンポーネント間の高速なデータ伝送と効率的な通信を実現できるため、こうした分野においてAIシステムの有効性や性能の向上に貢献できる。
メーカー各社はシリコンフォトニクス技術を利用することで、AIシステムを最適化し、優れた演算性能を引き出して、より高精度かつ応答性の高い成果を達成することができる。
前途は有望だ。AIにシリコンフォトニクスを使用することで、アルゴリズムに大きな変革をもたらし、AIシステムのさらなる高性能化を実現する可能性がある。より高い性能と効率で、複雑なタスクを処理できるスマートシステムの開発が可能になるだろう。
AIネットワークがさらに進化していけば、シリコンフォトニクスはヘテロジニアスインテグレーションとともに、スイッチング層を変換し、既存のパケットスイッチングを置き換えていくだろう。これにより、同じインターコネクト密度で、より低レイテンシと低消費電力を実現できるとみられる。
シリコンフォトニクスは将来的に、AIシステムにとって、既存の電気信号ソリューションに比べて重要なメリットを提供する、革新的な技術となるだろう。AI分野において実現可能なアプリケーションやソリューションの限界を広げていくはずだ。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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