Nordic、米AI新興のハードウェアIPを買収へ:ハードウェアAIをデバイス全体に(2/2 ページ)
Nordic Semiconductor(以下、Nordic)は、米国のAI新興AtlazoのIPポートフォリオを買収する予定だ。Nordicは米国EE Timesの取材に対し、「当社のポートフォリオ全体のデバイスに、ハードウェアAIアクセラレーションIPを追加する計画だ」と述べている。
エッジAI分野で、顧客に応じた差別化を
Holstad氏は、「Nordicの顧客企業は、当社のチップを使用することで、これまで以上に多くの重要な問題を解決できる」と付け加える。
同氏は、「われわれは、何よりもまずIoTメーカーになるための道を進んできた。現在は、IoTと超低消費電力の分野で拡大し、顧客企業に代わって解決可能な問題の範囲を広げていくことを目指すようになった。今では、MCUを搭載した無線というより、無線を搭載したMCUと言うべき、高い計算能力を備えたマルチコアデバイスを手掛けている」と述べている。
tinyMLの分野が業界全体をけん引するに伴い、AIアルゴリズムは汎用Arm MCUコアで動作できるまでに小型化/軽量化されるようになった。Nordicの既存顧客に向けたtinyML用アプリケーションは通常、異常/音声検出アプリケーションを備えている。
Holstad氏は、「Nordicの既存のAIソフトウェアスタックは、Armの機械学習(ML)ライブラリをベースとしている。われわれは、最高のデベロッパーエクスペリエンスを実現すべく、Edge Impulseなどのサードパーティーと提携している」と述べる。
AtlazoのIP買収には、数種類のセンサーに特化したニューラルネットワークアルゴリズムが付属する。これは将来的に、Nordicの自社モデルとして提供される可能性がある。
Holstad氏は、「しかし全体的には、顧客企業がそれぞれの経験やリソースのレベルに応じて差別化を実現できるようにしたいと考えている」という。
「IoTが、われわれの思うような方向に向かっているのであれば、より多くのAIコンピュートが必要だ。単に世界中の全てのセンサーデータストリームをクラウドに上げ、AWSに解決させることはできない。それは、さまざまな理由から持続可能なものではないからだ。当社の顧客企業は、可能な限りセンサーに近いところで問題を解決する必要がある。われわれはこうした問題を解決する上で、旧型の汎用Armコンピュートを使用する以上のことが必要だと感じている」(Holstad氏)
Holstad氏は、「IPにハードウェアアクセラレーションを追加することは、現在のArmコアに適合するアプリケーションにとっても有意義だ」と述べている。
「Armコアで100ミリ秒かかる推論が、アクセラレーターではその数分の一で済むかもしれない。そのため、コスト面でバランスがとれていれば、(Nordicの全製品ラインに)搭載されるだろう。例外はあるだろうが、現時点では、将来的に計画しているほぼ全ての製品に(AIアクセラレーションを)搭載することで、優れた価値を提案できると考えている」(同氏)
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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