ルネサスの23年度3Qは予想比上振れ、自動車向け好調：通期業績は減収予想（2/3 ページ）
ルネサス エレクトロニクスの2023年度第3四半期業績（Non GAAPベース）は、売上高が3794億円（前年同期比2.1％減）、営業利益が1323億円（同105億円減）、営業利益率が34.9％（同2.0ポイント減）、当期純利益が1083億円（同119億円増）となった。なお、売上高は予想比で2.5％増となっている。
DDR5への移行拡大で伸び期待、車載は慎重な見方
ルネサスの社長兼CEO（最高経営責任者）の柴田英利氏は、第4四半期のセグメント別の売り上げ見通しについて説明した。自動車向けは安定して推移するほか、産業向けもFA（ファクトリーオートメーション）が地域差はあるが、全体としては引き続き増加していく見込みだという。一方、PC／モバイル向けは、第2四半期に底を打ってからゆっくりとした回復基調だが、第4四半期は季節性の落ち込みを見込む。また、コンシューマー向け全般としては「他のセグメントに少し遅れて在庫消化がようやく進んできたところで、第4四半期は減少を見込んでいる」という。
クラウド向けでは、DDR5（メモリ技術）への移行の拡大を背景に、大きな伸びを見込んでいる。さらに2024年度上半期からは、AI（人工知能）サーバ向けでパワーステージが立ち上がってくることを見込んでいて、柴田氏は「そうなればもう一段、クラウド／データセンター向けの伸びが加速するだろう」と語った。
なお、第4四半期の見通しにおいて、自動車向けについては「肌感覚としては慎重に見過ぎかもしれない。あまり下振れをさせたくないと思い、慎重な見積もりで行くことにした」と説明している。
具体的には、米国での全米自動車労働組合による大規模ストライキの影響について「現在われわれが見ているデータには影響が出ていないが、影響ないことはないだろう」とし、影響が出始める時期は不明瞭なものの「どこかで下がるのだろうという見込みを、あらかじめ少し第4四半期に織り込んでいる」という。また、欧州でも「ティア1メーカー顧客が、大きく在庫を絞るだろう。欧州は、自動車向けではかなり落ちるだろうと見込んでいる」と説明。これに対して、日本や中国などでは多少の伸びを見込んでいるという。
自社在庫、販売チャンネル在庫の動き
第3四半期における在庫水準に関しては、自社在庫はDOI（Days of Inventory）が前四半期（102日）から減少し、100日となった。事業別でみると自動車向けで減少した一方、産業・インフラ・IoT向けはほぼフラットで推移した。販売チャンネル在庫は、自動車向け、産業・インフラ・IoT向けともに想定通りの若干増となり、WOI（Weeks of Inventory）は9週強で着地した。
自社在庫の増減要因を見ると、金額規模では、前四半期とほぼ同水準となった。原材料は生産調整によるウエハーの投入減によって増加していて、第4四半期も生産調整を行うことから同様に増加する見込みだ。仕掛品は、前工程の加工を終えたウエハーを備蓄する「ダイバンク」を拡充を進めていたが、自動車向けを中心とした40nmプロセスのマイコンを除き、「ほぼほぼ第3四半期末で、いま必要なものは完了した」という。今後このダイバンクのミックスを最適化していく方針だ。ルネサスのCFO（最高財務責任者）を務める新開崇平氏は「第4四半期は需要の弱い製品群のダイバンクを消化しつつ生産調整を行うことから、仕掛品は減少することを見込んでいる。一方でまだ足りていない40nmマイコンのダイバンクは徐々に増やしていく予定だ」と説明していた。
完成品については、需要に応じた出荷を進め、第3四半期は想定より若干減少した。第4四半期は、2024年度第1四半期（2024年1〜3月）の後工程の稼働日が若干少ないことに備えた先行生産を行うことから一時的な増加を見込んでいる。
チャンネル在庫は、自動車向け、産業・インフラ・IoT向けともに第3四半期は微増となった。第4四半期についても、ともに在庫保有水準を増加する想定だ。これは、短納期のオーダーが増加していることを受けたものだという。柴田氏は「幅広いセクターで、不透明感を感じている顧客層がかなり在庫をタイトにコントロールしている。その分、少しでも需要が上がってくると、すぐにモノが必要となってしまうという状況がいろいろなところで発生している。そうした需要を取りこぼさないようにしていく」と説明していた。
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