ルネサスの23年度3Qは予想比上振れ、自動車向け好調:通期業績は減収予想(3/3 ページ)
ルネサス エレクトロニクスの2023年度第3四半期業績(Non GAAPベース)は、売上高が3794億円(前年同期比2.1%減)、営業利益が1323億円(同105億円減)、営業利益率が34.9%(同2.0ポイント減)、当期純利益が1083億円(同119億円増)となった。なお、売上高は予想比で2.5%増となっている。
稼働率は2023年度第4四半期が「当面のボトム」
2023年度第3四半期のウエハー投入量ベースの前工程稼働率は60%弱で、「生産調整によって、想定より若干減少した」としている。ライン別の稼働率(下図)をみると、8インチラインが70%付近となっている一方で、12インチラインは40%程度まで低下している。新開氏は、8インチラインではダイバンク拡充のために前四半期比で増加した一方、12インチラインはダイバンクの補充が終わったことから、稼働率が低下したと説明した。
なお、2023年度第4四半期は、8インチラインでは第3四半期末でダイバンクの補充がおおむね完了していることから稼働率が低下する一方、12インチラインについては、ミックスの改善が進むことで多少稼働率が上がる見通しだ。ただ結果としては、全体では前年同期からさらに微減となる見込みだという。
ただ、稼働率は第4四半期が「当面のボトムとなる」と見込みといい、新開氏は「2024年度第1四半期以降、12インチの工場(茨城県の那珂工場)での40nmマイコンの増産投資の効果が寄与することを見込んでいる。第1四半期後半からその分の稼働が増え、全体の稼働率を押し上げるだろう」と述べていた。
中国競合のIGBT「ものすごく伸びてきている」
柴田氏は、米国による対中規制強化を受け、中国が成熟ノード強化を進める状況にも触れた。特にIGBTでは中国の競合が「本当にすごく、ものすごく伸びてきている」と述べ、「中国でIGBTを伸ばすということは、今後考えにくい。当社の先々のプランでも、あまり中国を前提としないプランで運営している」と説明した。
一方、マイコンやアナログ半導体については「今のところローカルの競合がどんどん出てきているという感覚は全くない」という。ただし、柴田氏は「これも時間の問題かもしれない」と続け、より高いパフォーマンスや信頼性が要求される分野での展開、さらにソリューションとしての提供を加速し「より高付加価値のマイコン、アナログのビジネスを伸ばしていく」と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ルネサス、エッジコーティックスと戦略的提携
ルネサス エレクトロニクスは、エッジAIソリューションを提供するEdgeCortix(エッジコーティックス)に出資した。今回の戦略的提携によってルネサスは、エッジコーティックスが保有する技術を組み合わせ、エネルギー効率をさらに高めたAI/ML(機械学習)機能を提供していく。 - ルネサスがシーカンスを買収へ、セルラーIoT技術を強化
ルネサス エレクトロニクスが、セルラーIoT向けプラットフォームを手掛けるフランスSequans Communications(シーカンス・コミュニケーションズ)を買収する。ルネサスは、コネクティビティ技術のさらなる強化を狙う。 - ルネサス、23年度2Q業績は予想比上振れ
ルネサス エレクトロニクスは2023年7月27日、2023年12月期(2023年度)第2四半期(4〜6月)業績(Non GAAPベース)を発表した。売上高は3687億円(前年同期比2.2%減)、営業利益は1291億円(同163億円減)、営業利益率は35.0%(同3.5ポイント減)、当期純利益は1190億円(同376億円増)となった。 - ルネサス、Wolfspeedと10年間のSiCウエハー供給契約
ルネサス エレクトロニクスは2023年7月5日、Wolfspeedから10年間にわたりSiC(炭化ケイ素)ウエハーの供給を受ける契約を締結したと発表した。2025年のSiCパワー半導体量産に向け、150mm/200mmのSiCウエハーの安定供給を確保する。 - ルネサス、PCB設計ツールを「Altium 365」に統一
ルネサス エレクトロニクスは、社内で用いるプリント基板(PCB)設計ツールをアルティウム製の「Altium 365クラウドプラットフォーム」に統一した。社内におけるPCB設計の合理化や簡素化を図り、コスト削減や市場への製品投入期間の短縮を狙う。 - ニデック、ルネサスとの協業で次世代E-Axleの勝機を狙う
ルネサス エレクトロニクスとニデックは、EV(電気自動車)向けの次世代E-Axleを実現すべく、PoC(Proof of Concept)を共同開発する。両社は2023年6月6日の記者説明会で、協業の背景について説明した。