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シリコン基板上にInAs量子ナノワイヤーを作製MBE法を用い高密度で高均一に

電気通信大学は、高密度で均一性に優れたInAs(インジウムヒ素)量子ナノワイヤーを、Si基板上へ作製することに成功した。開発した結晶成長技術を応用すれば、量子デバイスのさらなる高機能化や高集積化が可能になるという。

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直径30nm以下の細いナノワイヤーを標準偏差8.8%で作製

 電気通信大学大学院情報理工学研究科基盤理工学専攻の山口浩一教授らの研究グループは2023年11月、高密度で均一性に優れたInAs(インジウムヒ素)量子ナノワイヤーを、Si(シリコン)基板上へ作製することに成功したと発表した。開発した結晶成長技術を応用すれば、量子デバイスのさらなる高機能化や高集積化が可能になるという。

 量子ナノワイヤーは、次世代の縦型トランジスタやメモリ、量子ナノセンサー、量子細線レーザーなどへの応用が期待されている。これらを実現するためには、量子ナノワイヤーの直径を40nm以下に微小化し、均一かつ高密度に作製する必要がある。

 そこで研究グループは、高密度で均一な量子ナノワイヤー構造を作製するため、MBE(分子線エピタキシー)法を用いた。具体的には、Si基板表面の酸化膜にGa(ガリウム)のナノ液滴を堆積し、基板を加熱することで反応させてナノメートルサイズのピンホールを形成した。そして、ピンホール底のSi基板結晶からInAs単結晶核が形成され、高さ方向に六方晶(ウルツ鉱構造)のInAsナノワイヤーが、高密度かつ均一に形成されていることを確認した。

 今回の実験では、面内密度が1〜2×1010cm-2というInAsナノワイヤーを、高い再現性で得ることができた。密度も従来に比べ10〜100倍となった。ナノワイヤー構造以外の堆積物や多結晶粒の形成も制御することができる。このため、直径30nm以下の細いナノワイヤー構造を、均一(標準偏差8.8%)に作製することが可能となった。

Si基板表面のSi酸化膜に形成したピンホールを、断面で観察した透過型電子顕微鏡像
Si基板表面のSi酸化膜に形成したピンホールを、断面で観察した透過型電子顕微鏡像[クリックで拡大] 出所:電気通信大学
高密度で高均一のInAs量子ナノワイヤー。上図は走査型電子顕微鏡像、下図はInAs量子ナノワイヤー直径のヒストグラム
高密度で高均一のInAs量子ナノワイヤー。上図は走査型電子顕微鏡像、下図はInAs量子ナノワイヤー直径のヒストグラム[クリックで拡大] 出所:電気通信大学
左図は直径が異なるInAsナノワイヤーの発光スペクトル、右図はInAsナノワイヤー直径と発光ピークエネルギーの関係(WZ:ウルツ鉱構造,ZB:閃亜鉛鉱構造)
左図は直径が異なるInAsナノワイヤーの発光スペクトル、右図はInAsナノワイヤー直径と発光ピークエネルギーの関係(WZ:ウルツ鉱構造,ZB:閃亜鉛鉱構造)[クリックで拡大] 出所:電気通信大学

 研究グループは今後、異種半導体結晶のヘテロ接合を導入したコア・シェル構造の量子ナノワイヤーや量子ドットナノワイヤーを作製し、量子デバイスへの応用を検討していく予定である。

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