「変革には適切なタイミング」、20%の人員削減を実施したSiFive:RISC-Vの「パイオニア」的企業(2/2 ページ)
RISC-Vプロセッサアーキテクチャの「パイオニア」といえるSiFiveが、最大20%の人員削減を実施した。EE Times Europeは、SiFiveのコーポレートコミュニケーションズ部門の責任者を務めるDave Miller氏に詳しく話を聞いた。
変革期のSiFive、これから目指す道は
ある段階で、SiFiveが戦略を見直す必要があるであろうことは理解できる。今日のRISC-Vコミュニティーは、SiFiveの功績なくしては存在しなかっただろう。一方、ISAの確立と採用の拡大におけるSiFiveの役割は、年月とともに大きく変化してきた。
最近の同社の変化を振り返って、Miller氏はEE Times Europeに、「賢明な企業は随時、変更を加えている。半導体ビジネスに長く携わってきた中で、大小さまざまな企業の事業再編やチームの変更を見てきた。それは、単にビジネスの性質によるものの場合もある。企業にとって成長することは使命だ。技術の進歩は非常に速いため、その進歩に合わせて組織を柔軟に移行するのが難しい場合もある。当社は、今後の機会に焦点を合わせて再編を行ってきた結果、現在の優位なポジションを確立している」と語った。
「もっと早くビジネスモデルを見直すべきだったのではないか」という質問に対し、Miller氏は、「変革には適切なタイミングだった。業界には多くの変化があり、当社のビジネスも変化した。RISC-Vは組み込み分野でスタートを切ったが、いずれ高性能アプリケーションに進出すると常々言ってきた。RISC-V IPをライセンス供与するという当社のビジネスモデルは、基本的には変わっていない」と答えた。
「当社には現在も、4つの製品グループがある。具体的には、組み込みアプリケーションに焦点を当てた『Essential』ファミリー、データセンターや高性能アプリケーション向けの『Intelligence』ファミリー、民生機器やウェアラブル製品などから多くの関心が寄せてられている『Performance』ファミリー、そして『Automotive』ファミリーだ。興味深いのは、顧客が複数の製品を利用する場合があることだ。例えば、PerformanceコアをIntelligenceコアと組み合わせることで、より充実したAIアプリケーションを構築することができる」(Miller氏)
Miller氏はEE Timesに対し、最近、高性能製品の性能が倍増したことや、GoogleがAndroidをRISC-Vに移植したことで、今後大きなチャンスが到来すると考えているとも語った。また、データセンターにおけるAIの機会に期待していることについても言及し、「RISC-Vはデータセンターでのオフロードに最適で、CPUとベクトル処理のように当社の製品を組み合わせることで、パワーと速度が圧倒的に優れたコンピューティングを実現できる」と述べた。
当初、RISC-Vの大きな利点は、オープンソースでロイヤリティーフリーであることとされていた。EE Times EuropeはMiller氏に、この点が変わったかどうかを尋ねた。同氏は、「オープンスタンダードの側面は、特にソフトウェア面で役立つ。また、多くの企業は1つのサプライヤーに縛られることを嫌うことから、RISC-Vの幅広いコミュニティーは、ユーザー企業の活動を容易にする。もう一つのポイントは、半導体不足が起こって以来、サプライチェーンの堅牢性や複数サプライヤーの確保が重視されていることだ。RISC-Vはこの点でも恩恵を受けている。さらに、オープンスタンダードは大学においてもよく利用されていて、世界中の大学における教育現場で採用されている」と語った。
【翻訳:田中留美、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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