パワーデバイスの温度上昇が接合と放熱構造の変革を促す:福田昭のデバイス通信(431) 2022年度版実装技術ロードマップ(55)(1/2 ページ)
今回は、「パワーデバイスにおける接合材料の現状と課題」の概要を紹介する。
パワーデバイスの接合における課題は「信頼性」と「放熱」
電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要を本コラムの第377回からシリーズで紹介している。
前々回から、第2章第6節第6項「2.6.6 接合材料」の説明を始めた。この項は以下の項目によって構成される。「2.6.6.1 接合材料の種類と特徴」「2.6.6.2 SMTにおける接合材料の現状と課題」「2.6.6.3 パワーデバイスにおける接合材料の現状と課題」「2.6.6.4 鉛フリー化」「2.6.6.5 先端半導体パッケージ分野における接合材料の現状と課題」「2.6.6.6 まとめと今後の動向」である。
前回は、「2.6.6.2 SMTにおける接合材料の現状と課題」の概要を解説した。今回は、「2.6.6.3 パワーデバイスにおける接合材料の現状と課題」の概要をご紹介する。
「2.6.6.3 パワーデバイスにおける接合材料の現状と課題」は以下の2つの項目、(1)「高信頼性化」、(2)「高熱伝導化」(高放熱化)で構成される。(2)「高熱伝導化」はさらに、(a)「放熱面積の拡大」、(b)「接合材料の高熱伝導化」、(c)「接合プロセス」に分かれる。
パワー半導体の「ワイドギャップ化」で動作温度が上昇
パワーデバイスの半導体材料は従来、シリコン(Si)が主流だった。最近ではワイドバンドギャップ(WBG:Wide Band Gap)半導体と呼ばれる、シリコンカーバイド(SiC)や窒化ガリウム(GaN)などのエネルギーバンドギャップがSiよりも広い材料が、パワーデバイスに普及しつつある。
WBG半導体デバイスはSi半導体デバイスに比べ、絶縁破壊電界強度(耐圧)が高い、オン抵抗が低い、動作温度を高くできる、といった優位性を備える。一方で動作温度の上昇は、現在使われているSAC系鉛フリーはんだの融点に近づくことを意味する。そこで耐熱性の高い接合材料へのニーズが高まっている。
具体的にはSiパワーデバイスの動作温度領域が150℃〜175℃であるのに対し、SiCおよびGaNのパワーデバイスは動作温度領域が175℃〜250℃と高くなる。半導体のダイと下地を接続するダイアタッチメント(ダイボンディングあるいはダイマウントとも呼ぶ)の材料が、特に高い耐熱性を求められる。
WBGパワーデバイスのダイボンディングには、鉛(Pb)の比率を高めたSn-Pb合金の高温はんだが使われてきた。ただし有害な鉛(Pb)を多く含むため、環境負荷が問題となる。そこで、焼結型接合材料が高Pbはんだに代わる接合材料として期待されている。
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